冠雪の天山(2004年2月17日付)

旧唐津銀行(2010年9月1日付)

天山夕景(2004年11月2日付)

大空のバルーン(2014年11月26日付)

日の出・有明海(2014年10月29日付)

次郎の家(2009年9月23日付)

雪中の葦(2009年1月27日付)

晩秋の鯱の門(2008年11月18日付)

連載「ふるさとスケッチ」を19年、330回続けた山田直行さん=神埼市千代田町の自宅

 佐賀女子短大名誉教授で元学長の洋画家、山田直行さん(71)=神埼市千代田町=が、県内各地の情景を水彩画で描く本紙連載「ふるさとスケッチ」が幕を閉じた。四季の移ろいを詩情豊かに紡いだ温かみのある絵とエッセーは19年、330回に及び、私たちの故郷に対する愛着や懐かしさを呼び覚ました。紙面を通し、読者との交流も生んだ山田さんのライフワークを振り返る。

 連載スタートは2001年4月。「佐賀中部特集」面に掲載されていた当初は佐賀市郡(現佐賀市)や多久市、小城郡(現小城市)が舞台だったが、描くエリアは県内全域へ広がった。広げたシートの上で絵筆とパレットを手に、山紫水明の肥前路や松浦路を画面に収め、町々を行き交う人たちの息遣いまでも、洒脱(しゃだつ)な文章とともに刻んできた。

 「スケッチは臨場感を大切にしていて、最初の頃は、現場で7割ぐらいまで彩色していた。文は飾ったり、かっこよく見せたりしようと思わず、余分な表現はそぎ落とすことに努めた」

 数あるモチーフの中でも幾度となく登場するのが天山。描く場所や季節を変えながら向き合った秀峰は、桜や麦焼きの畑、夕空などどんな“素材”と組み合わせても相性抜群だった。小城市小城町から眺めた「冠雪の天山」(04年2月17日付)は「雪をいただく山並みが白く天空に浮かんでいる。まさに天の山、天山である」と魅力をつづった。

 読者から届く声や現場での一期一会が創作のエネルギーとなった。高校時代の恩師で洋画家の故深川善次さん(昨年10月死去、享年95)からは激励の便りが100通以上も届き「中には『特選』と書いていただいたのもあってうれしかったね」。鹿島市が舞台の「日の出・有明海」(14年10月29日付)では、現場に居合わせたカメラマンに「きょうはよかばんた!」と声を掛けられた。絶好の写生日和だと背中を押され、筆を進めた。

 連載中に大病を経験した山田さんは「古里を形づくる山や平野、川、海の輝きを引き出したくて『美とは何か』と自問しながら勉強、修行だと思って続けてきた。誠実に絵と向き合う姿勢の大切さを再認識できた」。豊かな自然と向き合った日々は、画家としての歩みを見つめ、生命の輝きを実感する旅でもあった。

 

 やまだ・なおゆき 1948年、神埼市千代田町生まれ。佐賀西高-佐賀大学教育学部特設美術科卒。?年から佐賀女子短大で教え、2010年からは学長を務めた。佐賀美術協会展、県展一席など受賞多数。2013年に県芸術文化功労賞。

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