会見で裁判に対する思いを述べる男子生徒=佐賀市

 鳥栖市の市立中学校で2012年、当時1年の男子生徒がいじめで重度の心的外傷後ストレス障害(PTSD)となり学校に通えなくなったとして、生徒ら家族4人が19日、市と同級生8人に慰謝料など計約1億2千8百万円の損害賠償を求める訴訟を佐賀地裁に起こした。生徒は提訴後会見し、「学校は『安心して戻れるようにする』と何度も言ったのに、何もしてくれなかった。もう信じられない」と訴えた。

 会見には両親も出席。母親は「学校や教委には当たり前の中学生活を送れるようお願いしてきただけ。裁判は苦渋の選択で、この形でしか息子を助けられないと思うと残念」と述べた。いじめの原因究明を求めたところ、地域で誹謗(ひぼう)中傷を受けたとして「どちらが被害者か分からない状態。息子は悪くないと、はっきりさせたい」とした。

 また、男子生徒がいじめのショックから自傷行為を繰り返していたことを明かし、「苦しみを少しでも楽にさせたい」と語った。

 いじめ発覚後、両親は市側に第三者委員会による調査を求めたが、対応は取られなかった。弁護士は「なぜ長期にわたる暴行や恐喝を学校が分からなかったのか検証が不十分では、生徒も保護者も安心できない。被害者の立場に立った救済ではなかった」と指摘した。

 訴状によると、生徒は12年4~10月、同級生から教室や校外で暴行と恐喝を受け続け、PTSDとなり、卒業を控えた現在まで登校できない状態が続いている。

■「思い届かなかった」市教委 被害者家族に不信感も

 「被害者を第一に考え、できることを精いっぱい行ってきたが、私たちの思いが届かなかったのはとても残念」。鳥栖市の中学校いじめ問題をめぐる損害賠償の提訴を受け、天野昌明・市教育長はこうコメントした。

 今回の訴訟で、いじめに深く関与したとして被告になった同級生は8人。しかし、市側のとらえ方は微妙に異なる。

 学校側は問題が発覚した2012年10月以降、加害生徒から聞き取り調査を行い、恐喝や暴行、エアガン乱射、カッターナイフ突き付けなどに13人が関わったことを把握。中心的に関わったとされたのは5人だった。

 市教委は5人を3日間の別室登校とし、加害生徒全員に2学期間にわたる更正プログラムを実施、勤労活動や面談などを課した。

 一方、男子生徒には自宅での学習支援や臨床心理士を派遣して「心のケア」に当たる一方、専門家による第三者機関「いじめ問題等対策委員会」を立ち上げ、再発防止を進めてきた。

 男子生徒は昨年1月から適応指導教室に通い、「サッカーに興じたり、友人もできていた様子だった」(市教委)という。ただ、同年10月、高校進学に関する相談のため、市教委が保護者に連絡したところトラブルになり、男子生徒も以後、適応指導教室も欠席しているという。

 これに対し、男子生徒の保護者は「進路に関する説明もなく、自分たちで進学先を決定した直後に市教委から連絡があり、ショックが大きかった」と不信感を募らせる。

 市教委は「すべての対応が後手後手と保護者に評価されていた。訴状を見て粛々と対応するしかないが、受験を控えたこの時期に、学校現場も動揺するだろう」と話した。

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