米大統領選の民主党指名争いは、全米14州で予備選が行われた3日のスーパーチューズデーで、中道派のバイデン前副大統領と左派のサンダース上院議員が激戦を演じた。今年に入り一時勢いを失ったバイデン氏が、中道派の支持を集めて復活した形だ。

 どちらが7月の民主党大会で指名を獲得するにせよ、民主党を結集させて、11月の本選でトランプ大統領と対決してほしい。民主主義や「法の支配」を軽視するトランプ氏が再選するかどうかは、米国だけでなく世界の行方を決めるからだ。

 今年の民主党指名争いの特徴は、資本主義の在り方を巡る議論にある。世界の資本主義の中心である米国でこうした議論が巻き起こることは、日本も含めて先進国の経済システムが曲がり角を迎えている現実を示す。大統領選を通して議論が深まるよう期待する。

 サンダース氏は「民主社会主義」を掲げ「労働者の生活を守るため、政府をもっと使おう」と呼び掛ける。具体策は富裕層に対する大幅増税、最低賃金の引き上げ、国民皆保険の導入、化石燃料依存から脱却し温暖化対策を強化するというものだ。大学無償化や学費ローン減免も提案し、若者の圧倒的な支持を得る。

 サンダース氏の主張は社会主義とのレッテルが貼られるが、国家が管理した旧東側の社会主義より、北欧の福祉国家のイメージに近い。大恐慌から国を救ったルーズベルト大統領のニューディール政策を例に、民主社会主義政策は米政治の異端ではないと述べている。

 こうした主張に民主党中道派や共和党、経済界は反発している。国民皆保険は財源不足で医療を破綻させ、再生可能エネルギーを過大評価しており、企業活動の制限でマイナス成長に陥るという反論だ。民主党中道派は、サンダース氏の主張は多数派の支持を得られず「トランプ氏に勝てない」と批判している。

 スーパーチューズデーを前にブティジェッジ前サウスベンド市長ら中道派政治家が相次いで予備選からの撤退を表明し、バイデン氏への支持を表明したのも「トランプ氏再選を防ぐ」という大義を優先したという。

 バイデン氏は中道派の支持を集めて勢いを見せる。だが、米国は上位5%の富裕層の保有する資産が68%と突出した格差社会に陥っており、不満を募らせる国民は社会改造を掲げるサンダース氏への支持を簡単にはやめないだろう。バイデン氏は既成政治の象徴として位置づけられてもいる。

 米国は19世紀末に極端に広がった経済格差を受け、不満派の意向をくんで独占禁止法の制定や労働運動の強化、貧困対策、教育の普及、参政権の拡大などさまざまな革新的政策を実現させてきた。サンダース氏の主張も、今は過激に聞こえてもやがて政策に組み込まれていくのではないか。

 格差が象徴する資本主義の問題、それを解決できない政治の機能不全への不満は米国だけでなく、欧州や中東、中南米、アジアで広がっており、デモの続発など不安定な政情の原因として共通する。トランプ氏が2016年に大統領に当選したのも、格差に憤る労働者層の票を得たためだ。

 世界は依然格差是正の処方箋を実行できていない。世界が注目する民主党の大統領候補指名争いが、ヒントを提供することを期待したい。(共同通信・杉田弘毅)

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