武雄温泉駅や有明沿岸道路などの現場を請け負う元山クレーン建設の元山英信社長。用途に応じて大小さまざまなクレーン22台を保有している=杵島郡大町町の同社(撮影・山田宏一郎)

元山英信社長が常に携帯している手帳にはスケジュールの他、クレーンに関する資料などがびっしりと詰め込まれている=杵島郡大町町の同社

東京マラソンに出場した元山英信社長=2018年2月、東京都

●昭和55(1980)年に創業し、3月で40年を迎える。

 武雄市にある建設会社が杵島郡大町町にあった時、そこに勤めていた父が独立し、クレーン1台から始めた。今では、22台のクレーン車を保有しており、この台数を持つ会社は県内で数社しかない。小さいのは4・9トン、大きいもので120トンの最新のクレーン車があり、クレーン車を動かすオペレーターは17人いる。佐賀県全域や長崎、福岡、熊本辺りは走って現場に向かう。全国クレーン建設業協会に属しており、各地方で協力業者に依頼しながら仕事をしている。40年の歴史を守りながら、他社との差別化を図り、お客さまからも、仕事を求めている人からも選ばれる企業になりたい。

●2002年に入社し、16年に社長に就いた。後を継いだ気持ちは。

 幼い頃は「ここで働くんだ」と言っていたが、高校、大学と進むにつれて、気持ちは薄れていた。大学卒業後、福岡で就職した。国や県から、のり面工事といった公共工事を担う会社に4年間勤めた。ある日、下請けの会社で働く親子を見て、「父と一緒に仕事をするのは必要かな」と思い、27歳の時に入社した。

 入社当時は、他の社員と同じようにクレーンの練習をして、現場に出ていた。5年ほど前、80トンクレーンを契約しようと、父と一緒に横浜に視察に行った。急きょ日帰りした父が翌日、現場の事故で脊髄を損傷するほどのけがを負った。約1年のリハビリを経て、今は動くようになったが、代表を代わることになった。

●現場は危険と隣り合わせで安全面にも配慮している。

 扱っているものは大きくて長いという自覚を持っていないと危険。少しでも事故やけがをゼロに近づけるために毎月、会議で社員には安全について考える時間を設けている。クレーン車はコンピューター管理もされており快適だ。つり過ぎや、倒れるのを防ぐといった危険な状態を教えてくれる。大きなクレーンになると先端にカメラがついていて、下が確認できるようにもなっている。壁越しに作業しないといけない現場などに活躍する。

●クレーンを動かすには資格が必要。人材確保には苦労があるのでは。

 クレーンを動かすオペレーターには、移動式クレーン運転士や大型特殊自動車、大型自動車の免許が必要となる。新規採用はしておらず、中途採用の人ばかりで、若年層の確保には苦労している。求人募集の中には、資格や経験がなくても会社で免許を取得できると記載しているが、誰でも簡単にできる仕事でもない。しかし、一度身についた技術は一生もの。試験場や自動車学校での受講費用の補助や技術習得の教育制度など、サポート体制を充実させている。

 働いている社員は、「町で見かけたクレーンに憧れて」「自分で大きなクレーンに乗りたい」と、違う分野から来てくれている。人材は正直もっとほしいが、受け身では来てくれない。人口約6700人の大町町で、地元企業として地元の人を雇用して頑張りたいと思っているが、若い人たちは会社のことを知らない。小中一貫校「大町ひじり学園」で、会社の話をさせてもらったり、会社に来てクレーンに触ってもらったりしている。未来の「元山ファン」を増やしたい。

 

◆好きな言葉

 やりもしないで答えを出すな(大学時代に過ごした佐賀県出身者の学生寮「松濤学舎(しょうとうがくしゃ)」で出会った先輩からの言葉)

◆好きな本

 「クレーン男」(ライナー・チムニク著)

◆好きな映画

 「レオン」「TAXi」など、リュック・ベッソンが監督や製作した作品

 

もとやま・ひでのぶ 1975年5月26日、杵島郡大町町生まれ、44歳。大町小・中、佐賀農業高、東京農業大農学部卒。公共工事を手掛ける会社を経て2002年に入社し、16年から現職。20歳、17歳、15歳の2男1女の父。

 

【オフタイム】ゴール目指し「スロージョグ」

 31歳の時、友人の勧めで、さが桜マラソンのハーフマラソンに出場した。2カ月後には50キロ、半年後にはフルマラソンと、次々に挑戦していった。しかし、1年後に挑戦したハーフマラソンで記録を求めすぎて、オーバーワークになり、膝を負傷した。

 走ることをやめなければいけなくなるかと諦めた時、ゆっくりとした速度で走る「スロージョグ」と出合った。今では年1回、山口県で開かれる下関海響マラソンのフルマラソンに出続けている。万全な準備をした上で当日、自分のペースを常に把握しながらゴールへ向かう。

 「呼吸も肉体も限界以上につらい思いをするが、走りきる達成感はたまらない」。普段は暗い夜道を1人で練習しているが、大会では何千人もの人と一つのゴールを目指して走る。「みんなでゴールに向かうことに喜びを感じ、体と心のリセットの意味で走っている」

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