日本で最古の結核の痕跡は弥生期の人骨に見られるという。平安時代には結核は「胸の病」と呼ばれた。〈病は、胸、もののけ、あしのけ…〉と清少納言の『枕草子』にある。豊臣秀吉の軍師だった竹中半兵衛は結核で亡くなった可能性が高いといわれている◆考えてみると、人の歴史は結核など感染症との闘いの繰り返しだった。石(いし)弘之著『感染症の世界史』は、地上で最も進化した人と最も原始的な微生物との「軍拡競争」と表現する。人は膨大な犠牲を払って免疫を獲得し、巨額の研究費を投じて開発した新薬で対抗してきたが、微生物は耐性を持ち、姿形を変えて現れる◆「感染症はいずれ制圧される」と期待された時期があった。1980年、世界保健機関(WHO)が天然痘の根絶を宣言した時である。だが、入れ替わるようにエイズが広がり、インフルエンザウイルスが「新型」を繰り出してきた◆今回の新型肺炎もまたしかり。やはり人類の進化の産物なのか。森林伐採など環境破壊や薬漬けのような生活も無関係ではなかろう。高齢者が増加する今後は、さらなる脅威となるのではないか◆一方で、楽観していいのかどうか、中国での新型肺炎の感染拡大はピークをうち、感染は減少傾向にあるという。4月末までに押さえ込めるとの見通しも。それまで心もとない春である。(丸)

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