臨時休校で開放された学校に登校する児童=3日午前8時11分(写真と記事は関係ありません)

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、佐賀県内で3日、「臨時休校」が一斉に始まった。小学生の高学年、低学年と保育園児の3人の子どもを育てるシングルマザーの記者が、先月末の突然の首相要請から休校初日の朝までを振り返る。

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 頭が真っ白になった-。

 「全国一斉臨時休校」の首相要請のニュース速報がテレビで流れた2月27日夕。夕飯の支度に翌日の準備、テレビの音をかき消すほど大きなきょうだい喧嘩の騒音の中、その発表は唐突に行われた。

 発表時刻の午後7時ごろは、まさに1人で仕事、家事、育児の全てをこなさなければならない「ワンオペ」にとって修羅場の時間である。「『春休みまで』という定義は、春休みはないという意味なのか」「児童クラブは開くのか」。「感染拡大防止のため」という大義名分は分かるにしても、頭の中にはぐるぐると疑問が渦巻く。食い入るように見たテレビの中の首相は続けてこう述べた。

 「企業は休みが取りやすくなる環境を整えていただくとともに、子どもを持つ保護者への配慮をお願いする」

 休日取得ができればいいという話ではない。そもそも、生活するためのお金が必要だから働いているのだ。特に1人で子どもを育てる家庭はそうだろう。家事、育児、生活費…全ての責任が1人親にかかっているのだ。まさに「死活問題」である。かき乱される心をどうにか深呼吸で整えつつ、我が家の対応策を考えた。

 まず、考えたのは放課後児童クラブ(学童保育)のこと。佐賀市内のほとんどの放課後児童クラブは、利用できるのが3年生まで。そのため高学年のわが子の居場所を考える必要があった。フリースクールという選択肢も頭に浮かぶが、利用料は施設により異なり、1カ月利用で約3万円前後かかる。補助金などない。休日勤務の際、個人的に依頼しているシッターのアルバイトは時給900円。長子が心の成長とともに、年下のきょうだいたちと馬が合わなくなったこともあり、次子と「2人で留守番させる」という選択肢にも躊躇する。それぞれの性格や考えを尊重しながら、最善の道を整えたい。いかなる境遇に置かれた親でも我が子に抱く気持ちではないだろうか。

 そうやっていろいろ思いを募らせていると、あらためて学校のありがたさが身にしみてきた。両親が他界し、近くに頼る人がいない身にとって、学校や保育所という存在は、私にとって子どもを守ってくれる場所だ。勉強をし、社会性を身につけ、危険から守ってくれる場所。我が子がそこにいると思えば、安心して仕事に打ち込むことができる。もちろん夏休みなどの長期休暇もあるが、これまでは「予定」として預け先や有休取得、すべてのことに計画を立てることができた。

 その後、佐賀県では対象外の児童を受け入れる「学校開放」が決まり、ひとまず胸をなで下ろした。

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 佐賀県では県の判断で、首相要請から1日遅らせた3月3日から15日まで、臨時休校とすることが発表された。「(遅らせた)その1日がなければ、現場が大混乱すると思い、総合的に考えた」という山口祥義 (やまぐち・よしのり)知事の言葉は、まさにその通りだと思った。

 臨時休校初日。いつもより1時間以上早起きし、子どもたちの弁当の準備を始めた。普段は給食があるが、休校期間中はない。日常とは違う“違和感”を感じ取ったのか、末っ子の保育園児は「登園したくない」と騒ぎ立てる。慌ただしい時間に構っていられず、申し訳ない思いを抱きながらも淡々と支度を進めた。

 佐賀市の「学校開放」は、平日午前8時半から午後3時半まで。利用する児童は、朝の検温を行い、体調などをカードに記入し、持参しなければならない。朝の短い時間ではかなりの煩わしさを感じたが、預けるためには仕方がない。

 ぐずる末っ子も連れて、ばたばたしながら母子4人で家を出ると、子どもたちであふれる普段の登校風景はなく、通学路を見守る人の姿もなかった。「安全のためには毎日一緒に登校しなければならないかもしれない」。また一つ、仕事が増えた気がした。

 少し遅めに学校に着くと、受付の玄関には児童の列はなかった。学校関係者は「ご家庭の配慮からか、児童が殺到することもなく、混乱しなくてよかった」とほっとした表情を見せていた。

 国は独自の有給休暇を設け、働く保護者が安心して仕事を休める環境整備を進めているが、対応は後手に回っている感は否めない。臨時休校は15日まで。感染拡大を防ぐ国の意図は理解しつつも、「働くママ」にとっては先が思いやられる朝だった。(山中)

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