今はどうか知らないが、朝早く長崎線の列車に乗ると、魚や練り物などを抱えた行商のおばさんたちをよく見かけたものだった◆昔は行商人がやってくると、買い物の場に子どもを同席させたという。彼らはモノを売るだけでなく、いろんな土地を回って得た世間の情報を教えてくれる存在。「市の風に当てた子どもは強くなる」といわれ、見知らぬ世界に目を開く貴重な機会でもあった(加藤秀俊『暮らしの世相史』)◆経済活動を通じて世間を知る、そんな「市の風」にいま当たっているのは高校生だろう。商業高校や農業高校では地域色豊かな商品開発など、生徒たちがさまざまな魅力づくりに知恵を絞っている◆全国町村会の広報紙「町村週報」にこんな調査があった。少子化に伴い公立高校の統廃合が進み、学校がなくなった市町村では15~17歳の人口比率が減少。統廃合前の6年間で総人口の1%相当が転出超過になっていたそうだ。高校という存在が、まちづくりに大きく影響していることを知る◆国も新たな地方創生の戦略として、若者の地方定着に向けた高校の機能強化を掲げている。学校が時代とともに変わってゆくのは避けられないにしても、地域にとって「市の風」に触れる場であるといい。おととい県南部の県立高6校で行われた閉校式の記事を読みながら、そう思った。(桑)

下記のボタンを押すと、AIが読み上げる有明抄を聞くことができます。

このエントリーをはてなブックマークに追加