武雄市と大町町が行った佐賀豪雨対応職員アンケートをまとめた文書。多くの教訓が記載されている

 昨年8月28日未明に佐賀県中西部を記録的大雨が襲った「佐賀豪雨」から半年がたった。武雄市や杵島郡大町町など甚大な浸水被害を受けた地域も日常を取り戻しつつあるが、自宅に戻れていない人もいる。被災自治体は新年度予算で佐賀豪雨の教訓を生かした災害対応を図っている。全ての自治体が教訓や施策を共有して、災害への備えを進めたい。

 佐賀県がまとめた被災者への住宅支援状況によると、公営住宅に入居している被災者は38世帯、自治体が借りた民間住宅に居住する「みなし仮設住宅」への入居も16世帯ある。改修工事中などを含め、今も50世帯超が自宅に戻れずにいる。被災した住宅の改修費を補助する応急修理制度を申し込んだ670世帯のうち506世帯で修理が完了しているが、今も改修が続いている家屋がある。十分な支援を続けたい。

 武雄市と大町町は、災害対応にあたった職員に課題や反省点を聞くアンケートをまとめている。「情報連絡がまた聞きになり、行き違いがみられた」「人命救助のボートが足らない。免許不要のボート購入を」「避難所に保健師が足らなかった」など実務面の指摘のほか、「災害への心構えが不十分だった」「疲弊している職員への配慮が足らなかった」などの反省も出ている。こうした声を生かして災害対応マニュアルの改定が進む。

 一方、武雄市は新年度の当初予算を「防災・減災予算」と位置づけ、災害対応の35事業を計画している。全世帯への防災行政無線受信機の設置▽防災アプリ構築▽自主防災組織への支援強化▽要支援者の個別避難計画策定▽災害時保健ボランティア制度新設▽備蓄計画策定▽避難所の環境改善-など、被災経験から生まれた対策が並ぶ。

 大町町の当初予算案はこれから明らかになるが、救助活動が難航したことを踏まえ、8隻のゴムボートを購入して全消防格納庫に配備することを盛り込む方針。既存のアルミ製ボートは重くて運搬が手間取るうえ免許が必要なため、免許なしで運搬も容易なゴムボートを一挙に増やす。

 大切なのは被災自治体のこうした取り組みを、他の自治体も自らの身に置き換えて考えることだ。武雄市や大町町を襲った線状降水帯が数キロ、数十キロずれていれば同様の水害はどこでも起きた。近年、全国で多発している甚大な台風被害も頭に入れておくことが大切だろう。住民への情報伝達の手段は十分か、救助や避難対応は大丈夫か。多様な視点が欠かせない。

 佐賀新聞も、佐賀豪雨を検証する連載企画を掲載している。住民への情報発信、避難所やボランティアセンター、災害ごみ集積場の運営など、武雄市や大町町の佐賀豪雨対応を中心に課題や教訓を探っている。参考にしてもらいたい。(小野靖久)

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