新型コロナウイルスの感染拡大で、2021年卒業予定の大学生が就職活動に苦慮している。昨年と同じく1日から企業説明会が解禁となったが、感染リスクを考慮して大手就職情報会社が3月中の合同企業説明会を軒並み中止し、企業も採用スケジュールを見直しているためだ。いわば制限を受けながらの本格始動である。学生が不利益を被らないように企業側にはこまやかな情報発信などの配慮を求めたい。

 「正直、焦りはあります。周りの友達も『これじゃ、不利だよね』と言っています」-。都市部の印刷・デザイン系の企業を志望する佐賀大学3年の女子学生は、合同企業説明会が実質的な1次審査になる企業があることを踏まえ、都市部の学生より出遅れて不利になるのではないかと心配する。

 来春卒業予定の大学生の就活については、経団連が長年のルールを廃止する一方、政府が企業に要請する形で従来の指針が引き継がれた。例年通りならば、3月から企業説明会がスタートし、学生は3、4月が最も忙しくなる。6月1日から選考解禁だが、インターンシップ(就業体験)で採用を約束するなど指針より早く内々定を出す企業も多く、そのピークは5、6月とみられている。

 そうした流れが新型コロナウイルスの感染拡大という異常事態でずれ込みそうだ。政府のイベント自粛要請も受け、就職情報会社「マイナビ」は1~15日に全国で開催予定の合同企業説明会をネット分を除いて中止した。同じく「リクナビ」も44都道府県で予定していた3月末までの合同企業説明会やイベントを取りやめている。

 企業側の対応も同様で、大手生命保険や都市銀行など多くの企業が2~3月に予定していた説明会などの中止を決めた。2月中旬のコンサルタント会社の調査でも、対象企業の半数以上が採用活動を「変更する」「変更を検討する」と回答している。

 採用活動や内定時期については以前から大企業から中小企業、中央から地方といった流れがある。今回、時間的制約などからより影響を受けるのは中小企業や佐賀などの地方だろう。少子化や大手企業の積極採用の影響で、ここ数年思ったような採用ができていないという県内企業の経営者の声も聞くが、合同企業説明会などで一定数のエントリーを得て採用につなげるという戦略も見直さざるを得ないかもしれない。

 こうした状況の中、学生たちに求められるのは、小まめな情報収集だ。就活イベントなどの中止を受け、説明会をネットだけで行ったり、採用面接をネットを介した遠隔面接に絞ったりする企業も出てきている。基本に立ち返り、間口を広げ過ぎず、志望先を絞り込んで動くことも必要だろう。

 就職情報サイトなどによると、近年ほとんどの大学生が6、7月までに就活を終えているという現実がある。さらに今年は東京五輪を控え、なるだけ早く採用を終わらせたいという雰囲気もあったが、このところの世界的な株価下落などにより、業種によっては想定以上の業績悪化で新卒の採用数を絞り込む動きが起こることも考えられる。県内企業には、ピンチをチャンスと捉え、こんな時だからこそ積極的な採用で優秀な人材確保に努めてほしい。(杉原孝幸)

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