線状降水帯による猛烈な雨の影響で、冠水した佐賀県武雄市の市街地=28日正午ごろ(共同通信社ヘリから)

 2019年8月28日未明に佐賀県中西部を記録的大雨が襲った「佐賀豪雨」から半年。3人が死亡、浸水を中心に6千棟を超える被害があり、復興の歩みが続く。武雄市と杵島郡大町町の事例を中心に災害対応を検証し、教訓を探る。

 「夜間で冠水の全容がなかなかつかめず、防災行政無線が聞こえないという話もあった」。浸水被害が1500棟を超えた武雄市の小松政市長は、災害対応の課題をこう繰り返す。

 防災無線が聞こえにくいとの指摘は以前からあった。今回は寝ている時間帯の激しい雨だったので、放送があったことさえ知らなかった人も多かった。

 市はこうした状況を受け、新年度から2年間で全1万8千世帯に防災行政無線受信機を配備する。防災アプリも構築し、受信機やスマートフォンに自動的に情報を届ける「プッシュ型」の情報提供を強化する。

 情報伝達手段を充実する一方、「災害時にどんな情報をどう伝えるべきか」も大きな課題だ。

 発災日の武雄市の状況を振り返ってみる。市は午前5時45分、全市に避難指示を出したが、既に浸水で避難できない人も多かった。前日の避難勧告で避難していた人はわずか27人。最終的には千人超が避難した。

 武雄消防署への救助を求める119番は午前4時12分に始まっていた。「5時前には腰ぐらいまで水が来た」という話は朝日町や北方町など各地であり、避難できなかった地域は多い。消防署の電話は鳴りっ放しで、2階がある人からの電話は切り、逃げる場所がない人を優先対応した。武雄町では激流に車が流され2人が死亡、北方町では浸水した家で1人亡くなった。

 「避難指示のタイミングは難しかった。午前4時半ごろに出すことも考えられたが、状況がつかめていなかった」。武雄市の西山丈晴・防災危機管理課長は振り返る。大きな警報音とともに地域内の携帯電話などに情報発信する「エリアメール」は、災害対応に追われて使用していない。

 住民にどんな情報をどんな形で伝えるべきだったか。被災後に確認できた状況から振り返ると、▽避難指示発令▽既に浸水地域があり、外の安全が確認できない場合は2階などに“垂直避難”▽119番はつながりにくく、逃げ場のない人を優先対応中▽運転中の車は高い場所に避難▽避難所や支援物資情報-などが考えられる。命の危険が迫っていたことを考えると、一部はエリアメールでの発信が必要だった。市は今後、避難準備の段階からエリアメールを活用する方針だ。

 「昼前のテレビで流れたヘリコプターからの映像で市内の状況が把握できた」という小松市長は、災害時の情報収集について「職員を役所に集めすぎたかもしれない。それぞれの地元で情報を集める分散型の人員配置も一つの手法かもしれない」と考えている。

 区長や消防団長などの人的情報網に加えて、警察や消防との連携、防災・防犯用のカメラ映像、SNSなどネット上の情報もある。災害時の情報入手手段をどれほど考え、どんな発信手段を持っているか。自治体の入念な備えが問われている。

このエントリーをはてなブックマークに追加