安倍晋三首相が全国の小中高校などを一斉に臨時休校にするよう要請した。新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を防ぐため、春休みに入るまでの措置で、実質的に新学期まで約1カ月、休みが続くことになる。

 確かに閉ざされた場所に長時間、子どもが集まる学校は感染拡大リスクが高い。「子どもたちの安全、健康を第一に」という首相の考えは理解できるが、あまりに突然で混乱が大きい。影響を減らすため、国は支援策に知恵を絞らねばなるまい。

 過去に例のない要請にもかかわらず、木曜の夕方に方針を公表して、月曜から急に休めというのは、あまりにもむちゃだ。文化やスポーツのイベントの自粛要請と同様、政府の基本方針には盛り込まれず、唐突感が強い。これだけ大きな判断をするなら、もっと早く準備しておくべきだった。

 3月上旬に公立高校の入試がある自治体も多い。卒業式や期末試験、部活動はどうなるのか。休み中の宿題は用意できるのか。学習権の保障のため、授業時間数を確保するにはどうしたらいいか。

 さまざまな問題があるが、とりわけ大きな悲鳴を上げたのは、低学年の小学生がいる家庭だ。小さな子どもを一人で残すわけにいかず、仕事を休む人も多いだろう。国はテレワーク(在宅勤務)を推奨するが、子どもと一緒では仕事が難しい。

 今回は幼稚園や保育所は対象外で、厚生労働省は、小学生を預かる放課後児童クラブ(学童保育)にも春休みなどの長期休暇と同様、朝から開くよう求めている。ただ、学童保育を希望者全員が利用できるわけではない。フルタイムで働く人が優先され、枠から漏れる人も多い。

 安倍首相は、休みが取りやすくなる環境を整えるよう行政機関や企業に求めた。しかも、それに伴う課題に対しては「政府として責任をもって対処する」と明言した。実効性のある配慮がなされるように、確実に手を打つべきだ。そのためには、金も人も惜しんではならない。

 共働きで夫婦どちらかが休む家庭も大変だが、ひとり親世帯はより厳しい状況だ。ただでさえ母子家庭の家計は苦しい。首相は収入減が生じるパート労働の保護者への支援策検討を表明したが、雇用保険に未加入の人も含めて実行してほしい。今回の臨時休校は地方自治体が先行した。各自治体の動きや課題も今後の展開の参考になる。大阪市は保護者が対応できない場合、学校で預かることも想定。千葉市の熊谷俊人市長も小学1、2年生などが休校中も校舎で過ごせる対策を検討し、少人数で教室を分ける案が出ている。

 一方、既に休校に入った北海道では、子どもの世話で出勤できない看護師が出た地域の中核病院が、予約のない外来診療をやめ、不安が広がる。

 萩生田光一文部科学相は「地域や学校の実情を踏まえ、さまざまな工夫があっていい」と述べた。教育委員会などに休校の時期や期間で柔軟な判断を求めたが、国は地方に任せきりにせず、各地の動きに機敏に反応し、連携する必要がある。

 感染が拡大した中国をはじめ、各国で同様の措置が取られているが、専門家もまだ今回の対策の効果を測りかねている。だが、思い切った手段に出た以上、国は最大の成果を上げ、弊害を最小にする努力をするべきだ。(共同通信・池谷孝司)

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