東京五輪・パラリンピックに向けたKIMONOプロジェクトで、県内の二つの飲食店がそれぞれスポンサーになった東ティモールとコロンビアの着物が完成した。いずれも、国の特徴やメッセージを日本の伝統の技で色鮮やかに表現した。関係者は、213の国と地域をイメージした着物が一堂にそろう日を待ちわびている。
東ティモールの着物は、佐賀市兵庫南のコーヒー店「オリジンコーヒー」の下永吉伸一さん(62)と妻の智恵さん(49)が支援した。京友禅の高橋啓さん(京都)が染色を手掛け、鮮やかな黄色にピンク色の太陽、伝統織物「タイス」、平和を象徴するハトなどを描いている。コーヒーの実も、熟すまでの色づきの変化を丁寧に表現している。
1月下旬、プロジェクトの事務局がある福岡県久留米市の呉服店で、代表の高倉慶応さん(52)に迎えられた下永吉夫妻。初めて完成品を間近にし「わぁ、きれい」とため息交じりに見入った。智恵さんは「各国の着物がそろうと圧巻でしょうね」と胸を躍らせた。
コロンビアの着物は、上峰町の創作料理店「大幸園」(中山博樹社長)がスポンサーを務め、絞り呉服の製造・販売の「藤娘きぬたや」(愛知県)が制作した。切り花栽培が盛んな国で、カーネーションやバラを4種類の絞りを使い分けて表現している。「五色の川」ともいわれるキャノ・クリスタレス川もあしらっている。
中山社長の妻で監査役の礼子さん(55)が、日本の伝統技術を発信するプロジェクトに共感し、手を挙げた。短大で服飾を学んだ礼子さんは「日本の文化や技術を知らない日本人が多い」と指摘。プロジェクトに参画し「子や孫の世代に、技術を伝える一助になれば」と目を細める。
プロジェクトは、213の国と地域をイメージした着物を制作し、伝統技術や平和へのメッセージを発信する。全国の企業や個人が、1カ国200万円を支援し、181カ国分が完成した。高倉さんは「ゴールは目前」と話す。県内では、唐津で市民運動として寄付を募り、ボスニア・ヘルツェゴビナの着物も完成している。