新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、サッカー・Jリーグは25日、3月15日までに予定していた公式戦の開催延期を決定した。Jリーグの判断は、政府から実施の有無を丸投げされて対応に苦慮していたスポーツイベントの主催団体に大きな影響を与えた。

 開催か、延期か。Jリーグは、不特定多数の人が集まる場で感染の危険を避けるために、延期を決断した。感染力や感染メカニズムがいまだに分かっていない現状で、やむを得ない判断だろう。感染拡大のリスクを少なくすることが何にもまして重要である。

 厚生労働省は20日、大規模イベントについて開催の必要性を検討するよう呼び掛けつつ、「一律ストップという段階ではない」(加藤勝信厚労相)とした。マラソン大会や屋内イベントなどが相次いで中止されたが、「経済への影響が大きい。自粛は慎重に判断すべき」との声も上がった。主催者側を混乱させた要因として、大臣の発言が「玉虫色」であったことは否めない。

 しかし、24日に政府専門家会議が「これから1~2週間が急速な拡大か終息かの瀬戸際」と見解を発表したことで風向きが一転。25日には「外出を控え、感染しやすい環境を避けてほしい」という政府の基本方針も発表された。この事態になり、Jリーグは苦渋の決断を下した。

 そもそも今シーズンは過密日程の中でスタートした。東京五輪期間中のJリーグは休止。サガン鳥栖を例に見ると、リーグ戦の約6割に当たる21試合を7月5日までに消化し、ルヴァン・カップ1次リーグの6試合も並行して戦う予定だった。5月までに中2日が3試合、中3日が10試合もあった。今回延期された試合が五輪前の平日に組み込まれれば、日程はこれまでに経験したことがないほど過密になる。何より選手のコンディション調整が難しくなろう。

 会場確保が円滑に進むかも不透明で、感染拡大の状況次第では3月18日の再開が遅れる可能性もある。村井満チェアマンは「延期が延びれば、五輪期間も併用することになる」と、五輪中断中のリーグ戦実施に含みを持たせる。

 Jリーグの判断が呼び水にもなり、日本野球機構(NPB)は26日に臨時でプロ野球12球団の代表者会議を招集して、オープン戦の全試合を無観客で実施すると決めた。同日にはバスケットボール・Bリーグも試合の延期を決定。プロスポーツ界は、雪崩を打ったように感染拡大防止への協力にかじを切っている。

 安倍晋三首相は26日、今後2週間にわたって大規模な文化・スポーツイベントの開催自粛を自ら訴え、政府も所管省庁ごとに各種施設、イベント主催者に具体的な要請を始めた。しかし、もっと早く指針を示せたのではないかという疑問は残る。水際対策しかり、政府は「先手」を強調するが、初動対応を含めて後手を踏んでいるといわれても仕方なかろう。

 村井チェアマンは会見で「国難」という言葉を使った。日本が置かれている状況について、そう感じる国民も多いはずだ。基本計画に則した冷静な行動を促すためにも、ここから先、政府はきっちりとした指針を提示してほしい。人ごとのような玉虫色の対応では困る。(市原康史)

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