このごろよく、食卓の小鉢にぬか漬けが残ってしまう。81歳で女優を引退した沢村貞子さんがその日常をエッセーに残している◆食事の最後に、お茶漬けでサラサラというのが習慣だったのに、ごはんが茶わん半分になっては漬物が余るのも当たり前。捨てるのももったいないと冷蔵庫を開ければ、昨晩残したぬか漬けをしまい込んでいたのを忘れていた…◆年齢とともに小食になって、柔らかくて食べやすいおかずばかりに偏りがち。それが次第に「食べる力」を奪い、気持ちが落ち込んで栄養状態が悪化して筋肉量が低下していく。75歳前後から急に増え始める、こうした虚弱状態を近ごろは「フレイル」と呼ぶ。短期間で状態が悪化し、手厚い介護が必要になるケースが多いらしい◆女性の2人に1人、男性の4人に1人は90歳まで生きる時代。評論家の樋口恵子さんによると、人生の最終盤で大事なのは三つの「ショク」だという。きちんと食べる「食」。人の役に立つ「職」。仲間をつくってふれあう「触」。フレイル対策も食生活や運動だけでなく、社会との関わりが生きる活力になる◆♪古い桜が咲かせる花は決して古い花ではないように/古い時計が刻む時間は決して古い時間じゃない…。さだまさしさんが「古い時計台の歌」でうたっている。本当の花は実はこれから、である。(桑)

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