男性の育児休業が注目されている。人口減少・少子高齢化の日本では子どもの数を増やしたいし、女性もどんどん職業に就いてほしい。この二兎(にと)を追うには男性が効率よく働き、育児や家事を分担することが不可欠だ。働き方見直しのきっかけとして男性の育休取得は有効であり促進したい。

 夫婦の就業状況はすっかり様変わりした。以前は農林業以外はほとんどが専業主婦世帯だった。しかし男女雇用機会均等法ができた1980年代半ばから増え始めた共働き世帯が現在は3分の2を占め、専業主婦世帯はその半分にまで減った。

 一方、共働き世帯の方が専業主婦世帯より子どものいる割合がわずかに高く、子ども2人以上の割合も共働きの方が多い。共働きは家計収入が安定する利点もあり、少子化の直接の原因ではなかった。むしろ夫の育児・家事参加が進み妻の負担が減れば、共働き夫婦は今より子どもを産みやすくなる可能性が高い。

 欧米先進国も同様に共働きが当たり前だが、日本は様子が異なっている。それは夫の育児・家事参加の際立つ少なさだ。6歳未満の子どもがいる夫が育児・家事に1日当たり使う時間は日本の約80分間に対し、スウェーデン、ノルウェー、米国などは3時間を超す。

 これは、夫が正社員として長時間労働し、専業主婦の妻が育児・家事をほぼ引き受けるという旧来の「役割分担」から脱却できていないためではないか。それが象徴的に表れているのが、男性の育休取得率の低さだ。

 育休は原則1歳になるまでの子どもを育てる誰もが取れ、最大で賃金の67%を雇用保険から支給される。しかし2018年度の取得率は女性の82・2%に対し男性は6・16%。国家公務員は12・4%になったが、政府が20年までに目指した13%の目標実現は難しい。

 「子育て先進国」であるスウェーデンは、育休の中に父親だけに割り当てられる期間を設けた「パパクオータ制」を導入して、男性の育休取得率が90%を超えた。日本は大きく見劣りする。

 なぜ日本では男性の育休取得が進まないのか。古い役割分担意識、長時間労働もあるが、最も大きいのは「男性は皆育休を取っておらず、なかなか言い出しにくい」という職場の雰囲気ではないか。だとすれば一斉に空気を変える必要がある。

 男性の育休は多くの効果が期待できる。家庭では、男性が赤ちゃんに日々向き合い、子育ての大変さを知るとともに、かけがえのない時を過ごす重要性に気づく。産後の妻の心身の健康を支え、家族の絆を強められる。

 人手不足に悩む企業は、女性従業員が出産を機に退職せず、育休後に仕事を続けてほしい。夫も育休を取れば、妻が職場復帰しやすくなる。また男女皆が育休を取るようになれば、属人的になりがちな仕事が相互カバーしやすくマニュアル化、効率化される。そうして職場全体の生産性が上がり、長時間労働解消、コスト削減も期待できる。

 政府が男性国家公務員の1カ月以上の育休取得を目指すと決め、小泉進次郎環境相が「育休」を実行したことを社会全体に広げたい。政府は育休給付金を休業前の手取り月収並みに引き上げる検討にも入っている。企業側も将来の消費者、労働力である子どもを産み育てることは利益につながると発想を転換したい。(共同通信・古口健二)

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