「初春の令月れいげつにして気淑きよく風和やわらぎ」。元号「令和」の2文字が採用された万葉集「梅花の歌」の序文。歌にある令月は、もともと陰暦の2月を指す言葉だが、大伴旅人が日本の風土に照らして1月と読み替えたと令和の命名者で国文学者の中西進さんが著書に書いていた◆その令月の2月。きょうは令和最初の天皇誕生日である。陛下はちょうど還暦を迎えられた。新型肺炎の影響で一般参賀は中止になったが、白やピンクの梅の花が咲くこの季節、万葉集と重なる世界が広がる◆陛下が生まれた1960(昭和35)年は池田勇人首相が所得倍増計画を打ち出した年。日本が高度経済成長への歩みを本格化させ、4年後の東京五輪を控え新幹線の整備が進んだ。モーレツに働く時代を反映して、都市部に通勤し夜寝るだけのために帰る「ベッドタウン」という言葉も流行した◆それから60年。夏には再び東京五輪が開かれ、陛下が開会宣言をされる見通しだ。人生100年時代にあって、還暦は長寿というより、新たな人生の出発を祝う意味合いが強い◆〈学舎まなびやにひびかふ子らの弾む声さやけくあれとひたすら望む〉。陛下の今年の歌会始の歌である。長女愛子さまは4月から大学に進学される。子どもの明るい将来を願う気持ちは誰しも同じ。ご一家にとっても新しいステージを迎える春になる。(丸)

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