諫早湾干拓事業を巡る差し戻し審で裁判所に入廷する漁業者や弁護団ら=福岡市

 昔の約束を「事情が変わった」となかったことにしようとするなんて-。国営諫早湾干拓事業(長崎県)を巡る請求異議訴訟差し戻し審の第1回口頭弁論。「時の経過で事情が変動した」として開門の無効化を訴える国に対し、漁業者側は「国の不履行が招いた」と批判。和解による解決に望みを託す。

 「『時の経過』で、漁業者を苦しめてるんだ」。弁論後の報告集会。支援者らを前に、漁業者側弁護団の堀良一事務局長は、語気を強めた。会場では、意見陳述に臨んだ漁業者平方宣清さん(67)=藤津郡太良町=も声を荒らげた。「国は開門を約束する判決を自ら受け入れた。その効力を争ってくることが信じられない」と非難した。

 2010年12月、福岡高裁で国に開門を命じる判決が確定した。開門の不履行について農水省は、会見で「開門しなかったのではなく、できなかったという認識だ。地元の不安を払しょくできずに工事に着手できなかった」と釈明した。

 「干拓地周辺は非開門を前提にハザードマップが策定されている」「最高裁決定で開門禁止義務が確定した」など、農水省はこれら「事情の変動」「時の経過」を主張。最高裁が示した補足意見について農水省は「権利の乱用に該当する余地が大きいことを示唆している」と読み解く。

 差し戻し前と後では、国に「開門してはならない」との法的義務が確定したという事情の変化がある。漁業者側弁護団の馬奈木昭雄団長は、「われわれが求める開門がなぜ権利の乱用にあたるのか。サボり続けた方が勝つという論理は信じがたい」とくぎを刺した。

 和解に関しては、漁業者側は「漁業、農業、防災の利益調整を」と要望した一方で、国側は従来の主張を繰り返した。

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