感染経路が不明の新型コロナウイルスによる肺炎患者の報告が各地で相次ぐ。北海道、千葉、神奈川、愛知、和歌山、さらに福岡と、地域は次第に広がりつつある。

 政府は「国内発生早期の段階」という見解を変えていないが、報告症例以外にも水面下に相当数の感染者が存在することがうかがわれる。日本感染症学会などは21日、「地域単位で感染対策のフェーズを水際対策期から感染まん延期へ移行させていくことが必要」とする提言を発表したが、街中で感染が広がる「市中感染」が、一部で既に始まったという見方を示したものと言える。

 市中感染が全国規模になれば、海外から渡航制限の対象国とされ、東京五輪・パラリンピック開催に影響する恐れもあるが、政府は科学的事実に基づいて遅滞なく流行入りを判断し、さらなる感染拡大を防ぐために万全の対応を取るべきだ。

 中国・武漢市での発生当初に「謎の肺炎」と呼ばれた新型コロナウイルス感染症も、徐々に特徴が明らかになってきた。

 中国の4万4千人余りのデータを分析した結果によると、全体の致死率は2・3%。ともにコロナウイルスの仲間が原因の重症急性呼吸器症候群(SARS)の9・6%、中東呼吸器症候群(MERS)の30%超に比べるとかなり低い。80・9%は軽症だという。

 ただし年代別では、10代~30代の致死率が0・2%なのに対し、60代は3・6%、70代は8・0%、80代以上は14・8%と、年齢が高いほど致死率が高まる傾向がある。また、持病がない人の致死率は0・9%なのに対し、心臓血管疾患がある人では10・5%、糖尿病では7・3%、慢性呼吸器疾患では6・3%などと大幅に上昇した。

 20日までに日本国内で亡くなったのは、いずれも80代の男性1人と女性2人の計3人。このうち男性には、気管支ぜんそくなどの持病があったことが分かっている。つまり、重症化しやすい高齢者や基礎疾患のある人たちをいかに守るかが最大の課題となる。

 感染者の急増に対応できる病床数の確保や、迅速な診断のために、国立感染症研究所や全国の地方衛生研究所、さらに民間の検査会社も含めた検査体制の強化が急務となっている。

 一般市民には、引き続き手洗い・うがいの励行や「せきエチケット」など感染症対策の基本動作徹底が求められる。医療機関の負担が過重にならないよう軽症ならば自宅待機で様子を見たり、高齢者や基礎疾患を抱える人が多い病院や施設の訪問を自粛したりする配慮も必要だろう。

 最近、感染者や関係者に対する差別的扱いが目につくようになった。憂慮すべき事態である。中でも死亡した80代女性が一時入院し、看護師の感染が確認された神奈川県内の病院のケースは深刻だ。感染の恐れを理由に関連病院から非常勤医師の派遣を停止されたという。看護師が保育施設から子どもの預かりを断られたり、患者が転院先から拒否されたりする事例もあった。

 今後、市中感染が拡大すれば、いつ自分が感染者になるか分からない。そのとき、偏見や差別を受けたらどんな思いをするのか考えを巡らせるべきだ。まして地域の医療活動が差別意識で妨げられるような事態があってはならない。(共同通信・赤坂達也)

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