クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で起きた新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の集団感染で、初めて乗客に死者が出た。

 同船は搭乗していた約3700人の多くが外国人で「中国以外で最大の集団感染」(英BBC放送)として注目を集め、日本政府の対応が国際的な批判にさらされている。厚生労働省は「対応は適切だった」と繰り返すが、後手後手に回ったことは否定できず、船内の感染対策も不備があったと考えざるを得ない。

 現在取っている対策が適切かどうか再点検を急ぐとともに、対応の意思決定や、データ、分析について全面的な情報公開と徹底的な検証をしなければならない。

 クルーズ船は香港で下船した香港人男性の感染が判明したため、停泊する横浜港で検疫を実施し、厚労省は急病者などを除き14日間の船内待機を要請した。不安や不満を訴える乗客らの悲痛な言葉が、電話や会員制交流サイト(SNS)を通じて報じられ、厚労省の方針は二転三転した。

 ウイルス検査については、発熱など症状がある人や感染者の「濃厚接触者」だけを対象とし、他の乗客らは14日間経過すれば検査なしで下船させる方針だった。だが、船内で体調を崩す人が続出し、対象を高齢者らに広げると、感染者は拡大の一途をたどった。全員検査に方針転換し、民間検査会社や大学の協力を得て1日に可能な検査を約300件から千件以上に増やす態勢づくりに追われた。

 当初は、糖尿病や高血圧の薬が届かないという問題も深刻だった。結局、高齢者らを一足先に下船させる措置を取った。

 新型肺炎は多くの感染者が軽症か無症状で、高リスクグループは高齢者や持病のある人と分かっている。下船した乗客や関係者への人権侵害や差別が広がるようなことがないよう注意したい。そのためには感染の現状と対策を丁寧に説明し、情報をリアルタイムで提供することが前提となる。

 検査で陰性の人の下船、帰宅が始まっているが、米政府の対応は異なる。米政府チャーター機で帰国した人は米軍基地でその後14日間隔離され、チャーター機に乗らない人も14日間を経ないと米国に入国できない。米疾病対策センター(CDC)は「感染防止が十分でなかったかもしれない。特に無症状の人を含む新たな感染者が船内で発見される割合から、進行中の危機であることが示される」と説明する。

 日本の国立感染症研究所は、乗客の多くが待機開始前に感染していたとする一方、待機後も感染は続いたとする分析結果を示している。乗員の一部は業務を続ける必要があり、そのため隔離が不十分だったという。

 日米専門家の分析は大きく違わないようだが、乗客の扱いが違うのはなぜか。政府はこうした点をきちんと説明する責務がある。

 船内で検疫に携わった検疫官、事務作業をした厚労省、内閣官房の職員らが相次いで感染した。検疫官は同じマスクを繰り返し使ったことが不適切だったという。危機管理の根本から見直すべきだ。14日間を船内で暮らすのでなく、陸上施設の個室で過ごしてもらえば多くの問題は回避できたはずで、今後、検疫に使える受け入れ施設の整備などを考える必要もあるだろう。(共同通信・上村淳)

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