本紙の釣り欄(毎週木曜日付)にメバルの名前をちょくちょく見かけるようになった。目が大きいので目張と書くが、これからの季節を代表する魚として「春告魚」の別名で知られる。藻エビなどを餌に釣り人は小気味よい引きを楽しむ。煮付けにすると美味である◆〈冴(さ)え返り冴え返りつつ春なかば〉西山泊雲。少し暖かくなりかけたと思うと、また寒さがぶり返すことを指す言葉に「冴返る」がある。急に寒くなって雪が降ったり、激しい雨にたたられたり。ここ数日は「冴返る」を実感した◆歳時記によると春は初春、仲春、晩春の三つに区分され、このうち初春を示す言葉には多彩な表現がある。寒さの中にわずかに春の気配を漂わせる「浅春(せんしゅん)」、立春を過ぎ、春になった意識が強い中での寒さを「春寒(はるさむ)」。「余寒(よかん)」は春の衣服に着替えてから思わぬ寒さがやってくることを言う。なんとも日本人らしい繊細さである◆ところが今年は新型コロナウイルスの騒動で、こんな風情も吹っ飛んだ。国内初の死者や感染経路のはっきりしない感染者が確認され、イベントの中止も相次いでいる。先の読めない不安が増幅して、収まる気配がない◆きょうは二十四節気の一つ「雨水(うすい)」。降る雪が雨に変わり、土が潤い始める。暖かくなれば騒動も収束へ向かうのか。本格的な春の訪れが待ち遠しい。(丸)

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