「寒」という字はもともと、屋根を表す「ウ(うかんむり)」の下に、二つの「艸(くさ)」と、おそらく布団を表現した「二」が描かれた字形だった。家の中に枯れ草やわらを積み上げ、布団を敷いて寒さをしのぐ。古代中国のそんな暮らしがほの見える◆雪でも降らない限り、こうした文字の一つに込められた冬の厳しさを実感できなくなっているのは、暖冬のせいばかりではないようだ。書家の石川九楊さんによると、現代人が手で文字を書かなくなったことも一因らしい◆手が「触れ」「触り」「つかみ」「とらえる」触覚から言葉は生まれ、それを文字にする手ごたえを通して思索が深まるという。「手を育てることを見失った時代のなかで、若い人はものすごく鈍感になっています」(『書字が教えてくれる』)◆スマホの普及で人間的な触感が失われる、と世間の不安は強い。香川県議会が子どもたちのネット・ゲーム依存症を防ぐ条例制定を目指している。ゲームは1日60分、休日は90分まで。スマホ使用は中学生以下は午後9時まで、高校生は午後10時まで―と家庭のルールを定めるという◆SNSで子どもが巻き込まれる犯罪も目立つ。強制力がないとはいえ、社会への問題提起として条例の意義は大きい。ただ、こんなことも親は注意できないでいるのか、と近ごろの家族関係も「寒々」しく見える。(桑)

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