「駅伝」なる競技名は昔、都へ通じる街道の途中に置かれた「駅」からリレー式に人や荷物、手紙などを届けた「伝馬」という制度に由来する。今でいう郵便や宅配便がルーツのようなものである◆その仕事に従事する飛脚を江戸では「十七屋」と呼んだ。十五夜を過ぎた十七夜の月は上るのが遅く、今か今かと立って待つ「立たち待まち月づき」。足の速い飛脚も「たちまち着く」というしゃれである。〈十七屋日本の内ならあいといふ〉と古川柳にあるように、「国内ならどこでもお届けしますよ」と頼もしく物流を担った◆そんな健脚にも天敵はあった。〈はやり風十七屋からひきはじめ〉。あちこちを回って多くの人に接する仕事だけに、冬場は流感にかかりやすい。手紙や荷物が届くのを待ちわびる側も、こんな句で「濃厚接触」を戒めたのだろう◆新型コロナウイルスによる肺炎で、国内初の死者が出た。一方で発生源の中国からの部品調達が滞り、福岡の日産工場が稼働停止を余儀なくされるなど、国内経済への影響も深刻化しつつある。飛脚が〈日本の内〉を走り回った昔と違い、人や物が大量に国境を越えて行き交う時代は厄介である◆今回のウイルスのような新興感染症が次々に生まれるようになったのは1970年代以降とか。グローバル化する世界は、人と病の向き合い方も問うている。(桑)

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