佐賀豪雨の被災者に元気を与える走りを期す木寺光昭さん(右)。自らも自宅が浸水被害に遭った=武雄市の白岩競技場

佐賀豪雨の被災者に元気を与える走りを期す木寺光昭選手。自らも自宅が浸水被害に遭った=武雄市の白岩競技場

 「8月豪雨で被災された方にも元気を与えられるよう力強く走り抜きます」。1月29日にあった武雄市チームの結団式で、木寺光昭さん(36)が選手宣誓した。昨年8月の記録的大雨で武雄市北方町にある自宅が床上浸水し、12月まで戻れなかった。練習ができず出場を諦めかけたが、仲間の言葉で奮起。宣誓の文言に被災を盛り込み、自らを奮い立たせた。

 昨年8月28日午前5時半、起きると家が水に囲まれていた。玄関から水が入り始め、床上60センチ浸水。妻と子3人と2階に逃げた。午後4時半ごろ、警察のボートでようやく家を出た。

 家は丸一日漬かり、風呂もトイレも使えなくなった。避難生活を余儀なくされ杵島郡大町町にアパートを借りた。生活は一変し、「1カ月は全く走れなかった」。

 10月初めに練習を再開。週1回程度、大町町と被災した自宅を往復した。11月には翌月の市各町対抗駅伝に向けて週3回に増やしたが、「コースは違うし、相手もいない。調子が上がらず大会で走れるか不安ばかりだった」と振り返る。

 12月初めに自宅に戻り、以前通りの練習になった。「やっぱりここだなぁという感じで、走ることでも日常に戻れたことを実感できた」。ただ、調子は戻らず、高校3年から18年連続出場している県内一周駅伝は諦めかけ、チーム練習にも足が向かなかった。

 1月の練習会に初めて顔を出してみた。「走ってもらわんば困る」と監督たち。「あてにしてもらえていると感じ、うれしくなった」。練習を本格化した。

 「調子はいいとは言えない。記録というより、とにかく走り抜きたい」と出走を期す。被災後、走っている姿を目にした友人が「走りよったね。よかった」とメッセージをくれた。「いろんな人が心配してくれていた。元気になった姿を見てもらいたい。そして、同じように大変だった人たちに、元気になってもらいたい」

 

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 郷土の誇りを胸に昭和、平成、令和とたすきをつないできた県内一周駅伝。「還暦」を迎えた記念大会の注目選手や指導者を紹介する。

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