半年後に迫った東京五輪・パラリンピックと並行して「日本博」の準備が進む。日本文化を内外にPRする政府キャンペーンで、3月14日、東京国立博物館前でのオープニングセレモニーを皮切りに全国で関連事業を展開していく。

 日本博は2018年、パリで開かれたが、今回は五輪で日本を訪れる外国人観光客を地方に誘客するとともに、観光効果を五輪後も継続することに主眼を置く。

 訪日外国人客のリピーターを増やすには、日本文化の奥深さと多様さに触れてもらう必要がある。日本の地方には価値のある伝統工芸や伝統芸能があるが、過疎化や高齢化で消えようとしている。そうした現状を知り、伝統文化の大切さを再認識する機会にもなる。

 ただ、衰退の危機にあるのは地域固有の文化だけでない。日本の代表文化である着物もそうだ。

 統計によると着物市場全体の売上高は07年、4700億円あったが、18年には2875億円まで縮小している。売り上げが低迷すれば工賃が上がらず、作品作りで妥協も強いられる。技術継承と後継者育成面でも影響が懸念される。

 東京五輪に向けて世界各国の文化をイメージした着物を制作する「KIMONOプロジェクト」もそうした危機感から始まった。久留米市の呉服店主が提唱し、参加213カ国・地域のうち180カ国分が完成し、既にG20大阪サミットなどで活用されている。

 佐賀県内でも唐津市の小学校が交流を続けるボスニア・ヘルツェゴビナの着物が市民の寄付で完成した。今年は続編として今月29日、「インバウンド時代における和文化の継承とまちづくり」をテーマにしたイベントを開く。

 「唐津のひいな遊び」と連携して着物姿で旧城下を散策する「ひなまつり道中」、十四代中里太郎右衛門さんや雑誌「ディスカバー・ジャパン」編集長らによるトークイベント、唐津焼で和食と地酒を楽しむ夜会など多彩な内容だ。

 着物業界の現状に触れたが、苦境ばかりではない。京都など観光地では着物姿の外国人を見かけるようになり、着物を日常感覚で楽しむ若い世代も増えている。先の統計でもここ数年は売り上げ減に歯止めがかかりつつある。

 日本博の広報大使に任命された黒柳徹子さんは就任セレモニーで、ニューヨークで着物を着た時の反響を明かしながら「(さまざまな日本の文化の中でも)特に着物をもっと日本の若い方や外国の人に知ってもらいたい」と語った。

 有田町ではきょうから「有田雛(ひいな)のやきものまつり」が始まり、20回目を迎える「佐賀城下ひなまつり」も11日開幕する。初春の情趣に浸りながら、着物や折々の祭事をはじめ暮らしの中にとけ込んできた和文化の魅力と継承、活用を考えるいい機会だ。(吉木正彦)

このエントリーをはてなブックマークに追加