「ちくわ耳」という言葉がある。話を聞いても右から左に抜けてしまって頭に残らないという意味だ。どんなに言っても、まったく気にせず聞き流す「馬耳東風」や「馬の耳に念仏」ということわざに近い◆この人はどうなのだろう。国会での安倍晋三首相。「誠実に」「真摯しんしに」と言葉は並べるものの、人の話が耳に響いているとは思えない。「桜を見る会」をめぐって「参加者は募ったが、募集していない」という趣旨の答弁。文字通り、耳を疑った◆新型肺炎の騒動でかすみがちな「桜」。「もう散った」と口をとがらせて援護射撃する人もいた。おっしゃる通り、もっと政策論議をという声もある。そのためには、きちんと納得できる説明を安倍首相にしていただければ済む話だ。しかし、そうでないから長くなる◆膨れあがった参加者、地元の支援者らを招いた「私物化」疑惑、そして名簿の廃棄。さらに違法性が指摘されている桜の前夜祭。何を言っても、馬耳東風だとあきらめていては政治の劣化は進むばかりだ◆「梅は咲いたか 桜はまだかいな 柳ヤなよなよ風次第」と江戸端唄に。平年より早く梅が開花して、いよいよ桜のつぼみが膨らむ季節を迎える。だが、咲く前から散ってしまったと、風に揺れるしだれ柳のように受け流されるのか。これでは、ちくわ耳と同じである。(丸)

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