原子力発電所が立地する自治体の首長はどうあるべきか。東松浦郡玄海町の脇山伸太郎町長が、福井県敦賀市の建設会社「塩浜工業」側から現金100万円を受け取っていた問題は、改めてこの問いを突きつけた。1年半近くたって返金し、続投を決めた脇山町長は、2度にわたる記者会見で説明をしたものの、疑念解消には至っていない。減給処分で幕引きをすることなく、第三者による調査を含め、さらなる説明を尽くすことが信頼回復には欠かせない。

 2018年7月、玄海町長選の直後に、面識のない男2人が町長の自宅を訪れ、当選祝いと称して現金100万円を置いていった。昨年秋に発覚した関西電力役員らの金品受領問題にも驚かされたが、玄海町を舞台に明らかになった今回の問題もあぜんとした。福島第1原発事故後も、原発ビジネスに見え隠れする闇の一端を顕在化させた。

 福島の事故後、再稼働した原発は玄海の2基を含め全国で5原発9基である。複合災害やテロに備える安全対策、廃炉作業と、関連産業にとっては数十年という長期に及ぶ巨額のビジネスが存在する。全国的に新・増設は困難な状況で、既存の原発に関わる工事をいかに受注するかが業者の生き残りを左右する。今回、過去の受注実績があり、福井から遠く離れた佐賀に乗り込んだ建設会社は利権を求めての「現金工作」だったのではないかとの見方がある。

 「脇が甘かった」と町長本人が認めるように、その場で拒否しなかったこと、返金までに1年半を要し、関電の問題発覚を受けて実際に動いたことは、町長と業者との関係性について疑念の温床となった。町民はもとより県民、国民に不信感を与えた影響は大きい。

 建設会社社長の名刺が添えられたのし袋に、「町長になったらこんなことがあるのか」と驚きつつ、返却しなかった。「賄賂をもらったような気分で、どうにかして返したかった」と後ろめたさを口にし、相談できなかったとも漏らした。そんな秘匿したい出来事を、なぜか当選後に知り合った男性に打ち明けて返金を託す。男性が塩浜工業を知っているという理由だったが、市民感覚では理解しがたい行動である。自ら書留ででも送金することがなぜできなかったのか。返金の結果も男性からの電話で聞いただけ。建設会社側には尋ねていない。この人物が誰なのか氏名を公表しておらず、町長の説明の裏付けを困難にしている。

 偶然ではあろうが、現金を渡した2人、返金に行った1人の計3人が、問題が明るみに出た時点ではすでに故人となっている。事実関係を証言できる関係者がいないことが疑惑を一層深めている。いまだに「なぞ」だらけである。

 脇山町長は一からの出直しを語った。現金受領に関しては「受け取った認識はなく、保管していた」と釈明した。違法性や捜査との絡みがあるのだろうが、説得力に欠ける。3カ月の給料返上という処分を議会が認めたとしても、それで責任を果たしたとは言えまい。今後も原発関連施設での「同意権」を有する首長であることに変わりはない。疑念解消へ向け、丁寧に説明する姿勢が問われる。まずは第三者による調査、検証を打ち出すことが、信頼を取り戻す一歩となる。(辻村圭介)

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