最愛の人を失う。かなしみに折り合いをつけるのは難しい。昨年亡くなったイラストレーター和田誠さんの妻平野レミさんが雑誌で語っていた。「あんまり完ぺきな夫と結婚しないほうがいいってことかな。だってさ、イヤなところがないと諦められないもん」◆愛妻家として知られた才人には遠く及ばないにせよ、誰しも「イヤなところ」は見せず人生を締めくくりたいと願う。内閣府の世論調査で「もし自分が認知症になったとき、不安に感じることは?」の問いに、「家族に身体的・精神的負担をかける」が73・5%で最多だった。独り暮らしが増えているせいか、「家族以外の周りの人に迷惑をかける」が61・9%で続いた◆「迷惑をかけたくない」意識は近年の終活ブームにも通底する。とはいえ、「助けて」と言えないまま事態を悪化させては元も子もない。困ったときに上手に援助を活用する「受援力」が求められている◆必要なときに声を上げ、感謝を伝える。大切なのはそんなコミュニケーション。和田さんの著書『お楽しみはこれからだ』に、映画「グレン・ミラー物語」の夫婦の会話がある。「あなたは愛してるって言ってくれたことがないのね」「そんなこと知ってると思ってた」「女はそれを聞きたいものなのよ」◆完ぺきな人は、言葉にすることを忘れないものである。(桑)

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