佐賀県内の中小企業や小規模事業者で後継者不足が顕在化する中、独立などを希望している第三者への事業承継を増やそうと、県や支援機関がマッチングに力を注いでいる。中小企業が地域振興に果たしている役割は大きく、衰退すればさまざまな悪影響が生じるとの危機感があるからだ。関係者で連携を強化し、積極的な支援で地域の活力を維持したい。

 「ゼロからの独立開業に対し、事業承継では前の経営者が培った人脈、知名度、店舗、仕入れ先など経営資源を引き継げる。創業コストも抑えられる」。県内の事業承継支援の中核的な役割を果たしている「県事業引継ぎ支援センター」(佐賀市)の古賀俊成統括責任者はこうメリットを強調する。

 支援センターは2015年9月、国が佐賀商工会議所に事業委託する形で発足した。昨年12月までの4年4カ月に492件の相談があり、56件の事業承継が成立している。

 経営者にとって長い年月をかけて育てた会社は何物にも代えがたく、子どもや近親者に継いでほしいというのが本音であろう。ただ、少子化や職業選択の広がりなどで承継が難しいのも現実だ。県は約1万5千社を対象に3年計画で事業承継診断を進めているが、約4千社の終了時点で「後継者がいない」と答えたところは全体の37%に上っている。そうした廃業を防ぐのが独立や事業拡大を見据える第三者への事業承継である。

 支援センターでは、自社を譲りたい人、譲り受けたい人の双方に登録を促しており、業種や地域、条件などを見てマッチングする。最近の成功事例としては、後継者不在の武雄市の自動車整備会社と、後継者人材バンクに登録していた自動車整備会社勤務の30代男性の間で承継がまとまっている。

 生身の人間同士の交渉である。経営への考え方、人柄などを重視し、「この人なら思いをつないでくれる」と前経営者の決断で話がまとまることもあるという。

 一方、希望条件のミスマッチで当然決まらないケースもあるだろう。事業承継の認知度が高まってきたとはいえ、相談せず廃業を決断する経営者も多い。県内では年間約250社が廃業しており、支援強化は待ったなしの課題だ。

 こうした現状を踏まえ、県は1月上旬、事業承継のマッチングサイトを運営する「バトンズ」(東京)、佐賀銀行など県内8金融機関と連携協定を結んだ。事業継承を望む県内企業に登録を促すとともに、事業承継の啓発活動や専門家育成、銀行員らを対象にしたセミナーなどを開いていく考えだ。

 中小企業庁によると、2025年までに70歳を超える中小企業の経営者や小規模事業者は245万人で、約半数の127万人は後継者が未定だ。こうした予備軍の廃業が続けば、650万人の雇用と22兆円の国内総生産(GDP)が失われる可能性があるという。

 廃業が続けば地域経済が受けるダメージは相当なものとなる。支援センターの古賀統括責任者は「“自分のようなところを買ってくれる人はいない”と決め込まず、まずは相談して」と呼び掛ける。後継者難を理由に廃業する企業の半数近くは黒字という。地域全体の問題と受け止め、地域の財産や元気を守っていくという視点が欠かせない。(杉原孝幸)

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