1998年、与那国島で撮影したジャック・マイヨールの写真を見ながら思い出を語る高島篤志さんと大河内はるみさん=唐津市東唐津の「洋々閣」

新作ドキュメンタリー「ドルフィン・マン」から(C)Mayol family archive/Daniele Padovan/Daan Verhoeven/Junji Takasago/Mehgan Heaney-Grier/Bruno Rizzato

唐津湾を背景に肩を組むジャック・マイヨールと高島篤志さん=2000年12月(高島さん提供)

 素潜りで人間の限界に挑んだ伝説のフランス人ダイバー、ジャック・マイヨール(1927~2001年)を題材にした映画2作品が、31日から唐津市のシアターエンヤで上映される。唐津は10歳のジャックが初めてイルカに出合った原体験の地。後年、唐津の海に郷愁を抱きつつ、変わりようを嘆いて「人間はもっと自然に謙虚たれ」と訴えたメッセージは今も語り継がれる。

 市内でダイビングショップを経営する髙島篤志さん(72)が初めてジャックと会ったのは1970年。伊豆半島沖で水深76メートルの素潜り世界新記録を達成したその足で「素潜りを教えてくれた漁師に会いたい」と唐津にやって来た。

 ダイビングを始めたばかりの髙島さんにとってジャックは「スター」。近寄り難い存在だったが、海を愛する者同士、心が通じ合ったのか、当時、映画俳優のスティーブ・マックイーンと同じサングラスを掛けていた髙島さんを「スティーブ」と呼ぶ仲となり、94年から自死する2001年まで、ジャックは毎年唐津を訪れ、髙島さんが手配した船で七ツ釜に潜った。

 ただ10歳の少年がイルカのようになりたいと思った唐津の海は来るたび、変わっていた。「海が汚れている」と怒りをあらわにし「人間も自然界の一員。もっと謙虚であれ」と語った。髙島さん自身、「浮遊物が多くなり、海の透明度が悪くなった」と実感する。

 唐津での定宿だった「洋々閣」の帳場横には髙島さんが98年、与那国島海底遺跡に潜るジャックを撮った写真が飾られている。おかみの大河内はるみさん(75)は「ふらりと現れて2、3日泊まっていくという感じで、子どもみたいなところがあったけど、純粋な人で、海や自然に対してもそうでした」と話す。

 映画は自伝を基にした旧作「グラン・ブルー」と新作のドキュメンタリー「ドルフィン・マン」を上映する。長年、環境保護活動に関わり、昨年褒章を受章した髙島さんは「生身のジャックが映像の中で何を語るのか、それが楽しみ」とスクリーンでの再会を待つ。上映は2月13日まで。問い合わせはいきいき唐津、電話0955(72)3278。

 ■ジャック・マイヨール 1927年、上海のフランス租界で生まれ、幼年時代から毎夏、国際リゾート地だった唐津に滞在。インドでヨガに出合い、日本の禅寺で精神を鍛え、76年、49歳の時、人類史上初めて素潜り100メートルを達成した。

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