害虫を駆除するための天敵ダニが入った紙パックを手にする県上場営農センターの川内孝太技師=東松浦郡玄海町有浦

害虫の天敵のダニ(左上)を入れる紙パック(中央)。中に産卵場となるフィルムシート(左)や保水用の水玉を入れる

 佐賀県が日本一の生産量を誇るハウスミカンの栽培で最大の課題となる害虫を、天敵のダニを活用して防除する技術を県上場営農センターが確立した。従来の化学農薬は連続使用で効かなくなることも多かったが、今回は生物農薬でその心配がなく、重労働である農薬散布も必要なくなるという。

 ミカン栽培では実の糖度向上を目指し水やりを抑えるため、ハウス内は高温で乾燥し害虫が発生しやすい状態となる。一番の害虫はミカンハダニで、葉や実の汁を吸い、果皮が白くなるため市場価値が落ちる。

 対策は殺ダニ剤の散布。だが、何度も使用するとダニに耐性ができて効果が出なくなり、農家を悩ませてきた。散布作業は30度を超えるハウス内でカッパを着て長時間行う必要があり、体力の消耗も大きいという。

 新たな防除法として近年注目されているのが、ミカンハダニの天敵、スワルスキーカブリダニだ。従来の天敵ダニをまくだけのボトル製剤に代わり、数年前から、餌や産卵場所などを内包した紙製のシート剤が登場している。性能が大幅に向上し、木に下げるだけで天敵のダニが発生し、長時間、害虫を抑えることができるようになった。費用は農薬より高めだが、省力化が図られ、メリットが大きいとしている。

 ただ厄介なのは、天敵も生き物ということ。アザミウマなど他の害虫を駆除するためミカンに使う農薬から影響を受けないことが必要となる。県上場営農センターは今まで用いられてきた薬剤40種類近くを調査し、影響のない薬のリストを作成。2018年産のミカンで実証したところ、開花後の生育期、2月と5月にミカンの木1本に1~2個、シート剤を下げたところ、ハダニはほとんど発生しなかった。

 センターは「防除マニュアル」として成果を公表、「県防除のてびき」にも反映させ、昨年11月には県やJAの農業技術員に向けた説明会を開いた。

 残留農薬の心配や作業者の農薬被爆がないなどメリットの大きい生物農薬だが、今回の方法を導入したミカン農家はまだ数戸で、普及はこれから。上場営農センターの川内孝太技師は「従来にない方法だけに、考え方を農家に知ってもらう必要がある。今後、実際に成果を出すことで、広めていきたい」と話している。

 

 <佐賀県内のハウスミカン>

 2018年の出荷量は6610トン、全国の約3分の1を占めて全国1位。唐津市や東松浦郡玄海町での栽培が盛んで、栽培面積は125ヘクタール。通常の露地物より早く、5月の連休前から9月中旬まで出荷する。このため、秋からボイラーを使ってハウス内を加温する。

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