「おふくろの味」といえば、代表的なのが肉じゃが。ところが、その作り方は牛肉か豚肉か、ひき肉かどうか、玉ネギを入れる入れないなど千差万別で、共通点は「しょうゆで甘辛く煮た」というだけだという(玉村豊男・四方田犬彦「味の記憶、あるいは絶頂の瞬間」)◆料理というものは、食卓を囲む家族や親しい者同士が「そう思い込む」幸福な幻想で成り立っているのだろう。一方で、近ごろ気になる統計もある。10~70代の1万人以上を対象にしたネット調査で、「ご飯が左、汁わんは右」の正しい配膳をしている人は53%にすぎなかった◆共働きで家族一緒に食事ができなかったり、一人暮らし世帯の増加が食卓の風景を変えている。一緒に「幸福な幻想」を分かち合うことはもう難しい時代◆「いただきます」の習慣は、今や家庭ではなく、政治の世界に根強く残っているらしい。1億5千万円もの巨額な選挙資金を受け取った国会議員夫妻に、原発工事の受注を目指す業者から100万円の当選祝いを渡された町長、「政治とカネ」に厳しい政党の市議まで他人の釣り銭を持ち去ってしまう…と食傷する◆よく見れば、「金」という字は「全」にご飯粒のような点が二つある。この方々が「原発の安全」や「責任を全うする」などと口にすれば、点が二つあるように見えて仕方ない。(桑)

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