風光明媚(めいび)な海岸線が広がる玄海町。その美しさからは想像できないほど、原発の誘致話が舞い込んだ当時の町は、財源も町民の暮らしも楽ではなかった。赤土にくわを入れ、沿岸の一本釣りで生計を立て、出稼ぎをしてきた町の人たち。50年以上前のことだ◆一部に反対運動はあっても、雇用を生み、財源が潤うとなれば誘致へ進むのは当然だった。おかげで十分とはいえなかったが、仕事ができた。旅館を始めた人やタイ養殖を始めた漁業者もいた。建設費20億円といわれた立派な庁舎、町の道路も整備された◆玄海町の脇山伸太郎町長は63歳というから、そうした先人の苦労は見聞きしていたはずだ。原発に金が絡む話も少なからず承知していたろう。ところがあろうことか、初当選のわずか2日後に建設会社から現金を受け取っていた◆なぜ追いかけてでも突き返さなかったのか。原発はあっても人口減少や産業振興などの課題が山積。すぐに取り組む時ではなかったか。忍び寄る誘惑に毅然(きぜん)とした態度が取れないようでは政治家の資格はない◆原発利権、原発マネー。何度同じことが取り沙汰されるのか。今回も関西電力を巡る問題と似通った構図だ。「まさか」というより「やはり」と感じた人も少なくなかったろう。これでは原発への理解どころか、疑惑の目が注がれるばかりである。(丸)

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