昨年8月の記録的大雨で深刻な浸水被害に見舞われた武雄市が、復興に取り組む理念や施策をまとめた「創造的復興プラン」を発表した。防災や減災のための機器やシステムの整備だけでなく、助け合いや支え合いの人づくりやまちづくりにも言及している。被災していない自治体も参考にしたい。

 基本理念は「被災前よりも一人一人が幸福を実感できるまちへ」。その実現を目指して「創造的」という言葉を盛り込んだ。基本方針として「災害に強いまちの創造」「安心して住み続けられるまちの創造」「なりわいの再生と新たなまちの賑(にぎ)わいの創造」「新しい文化の創造」という四つの創造を示した。

 災害に強いまちづくりでは、新年度から2年間で全世帯に防災行政無線受信機を設置することや、災害時に避難情報や河川水位などを提供する防災アプリの開発、新たなハザードマップ作成などを挙げた。豪雨の際「激しい雨で屋外からの放送が聞こえにくかった」という声があったことを受け、スマートフォンなどの端末を活用するプッシュ型の情報提供を強化する。

 ただ、市内約1万8千世帯への受信機設置費の見込みは10億円と高額だ。設置は希望世帯になるとみられるが、防災アプリを先行開発すれば受信機を必要としない人も増えるだろう。開発を急ぎたい。水害は再び起こり得る。昨夏の浸水世帯に優先的に設置するなどの工夫も大切だ。

 機器類の整備とともに、建て替え計画を進めている白岩体育館の災害対応機能の充実や、同体育館を含む白岩運動公園を災害時の対応拠点として整備することも盛り込んだ。野球場の移転を含めて被災前から一帯の整備計画はあったが、水害を受けて災害への視点が加わることになった。

 自助・共助の観点から「助け合い、支え合い」の組織や人づくりにも取り組む。自主防災組織を強化し、要支援者や災害弱者の把握と集落支援員の配置などを挙げ、「孤立を防ぐコミュニティーづくり」を進める。自主防災組織の組織率は94%と高いが、今回の水害でどんな活動ができたのかを検証し、課題や反省を生かすことが大切だろう。災害弱者の把握には、個人情報保護や情報更新という課題もある。集落支援員の活動や、ボランティア活動をしてもらった人たちとの関係継続にも注目したい。

 先日、小城市で昨年の豪雨被害の教訓を共有して市民レベルで防災を考えるイベントがあった。災害ボランティアをコーディネートした人は、日ごろのつながりの大切さと地域の事情を把握しておくことの大切さを説いた。参加した約70人の市民は豪雨当日の町の状況や自らの行動を振り返り、情報伝達や避難所運営など災害対応の課題を共有して、行政に求めることや自分たちができることをまとめた。住民が考え、行動することにつながるこうしたイベントは有意義と感じた。

 豪雨で被災した自治体が復興や検証に向けて具体的な動きを始めている。被災しなかった自治体もこうした事例に目を凝らし、自らの態勢や施策を再確認する機会にしてほしい。深刻な浸水被害が佐賀でも起きたことを胸に刻み、身近な自治体の取り組みを教訓として生かしたい。(小野靖久)

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