日本と米国の相互協力をうたった現行の日米安全保障条約は、19日で署名から60年を迎えた。

 戦後日本の外交・安全保障政策の「基軸」と位置付けられ、アジア太平洋地域の安定に貢献してきた安保条約は今、重要な課題に直面する分岐点に立っている。

 「米国第一主義」を掲げて国際秩序の混乱を招いているトランプ米政権、中国の台頭など地域環境の変化―。不安定さを増す情勢の下で、国際社会の真の安定と繁栄のために日米両国がどう協力し、役割を果たしていくのか。グローバル時代における日米安保体制の在り方を再定義する必要があろう。日本が独自に取り組むべき課題も含めて、抜本的な検討を進めなければならない。

 安保条約と同時に署名され、在日米軍人らの特別な法的地位を定めた日米地位協定の改定にも取り組まなければならない。沖縄などの過重な基地負担の解消も日米安保を支える国民の信頼を確保するためには不可欠だ。

 1960年に全面改定された日米安保条約は、51年に署名された旧安保条約を見直し、日米両国の「対等性」を目指したものだ。旧条約では抜け落ちていた米国の日本防衛の義務を盛り込む一方、日本側は米軍に国内施設の利用を認め、「双務的」な条約とした。

 それから60年。日本は米国の「核の傘」を含む抑止力の下で、軽武装・経済重視の路線を進み、復興・発展を実現した。

 ただ、政治や経済分野も含む幅広い相互協力を掲げた条約は、軍事的な「同盟」が柱となってきたのが現実だ。日米同盟の下で、自衛隊の活動範囲は米国の世界戦略に従うように地球規模に拡大し、自衛隊と米軍は運用の一体化が進んでいる。

 78年に初めて策定された「日米防衛協力指針」は、旧ソ連の上陸侵攻を想定して日米の役割分担などを明示。東西冷戦の終結後には、中国の軍備拡張や北朝鮮の核・ミサイル開発を踏まえ、指針は2回改定された。

 96年に署名された日米安保共同宣言は、日米同盟の目的を「アジア太平洋地域の安定的な繁栄」と再定義し、安保条約が定めた「日本と極東」という範囲を踏み越えた。

 さらに、2015年に安倍政権下で成立した安全保障関連法は、集団的自衛権の行使を解禁し、日米の軍事的一体性をさらに深める道を開いた。

 にもかかわらず、日米同盟は盤石とは言えない。今、揺るがしているのはトランプ大統領自身だ。トランプ氏は、防衛義務と施設提供という「非対称」の負担の関係を「不公平だ」と強調、在日米軍駐留経費の負担増を求める。安倍政権下で膨らみ続ける防衛予算は、米政権が迫る巨額の米国製防衛装備品の購入による面が大きい。

 60年続いてきた日米安保体制とはいえ、基盤となる信頼関係は丁寧な対話を心掛けなければ維持はできない。在日米軍基地が米国の世界戦略を支えている重要性をトランプ氏に理解させる説明を尽くすべきだ。

 米国の影響力は依然として大きいが、その低下は大統領が誰になろうとも避けられない流れだろう。日米安保体制を基軸としながらも多角的な外交を展開し、安全保障の枠組みを築いていく必要がある。中国との互恵関係、対北朝鮮での韓国との連携、日本独自の国際貢献策など、取り組むべき課題は多い。(共同通信・川上高志)

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