犬はさかさまにすると神になる。英語の「DOG」を逆から読めば「GOD」。物理学者の寺田寅彦にそんな一文があるそうだが、うまいことを言う。犬を飼っているつもりが、いつの間にか向こうのペースで家庭が回り始め、飼い主がしつけているつもりが、いつの間にか命や自然との向き合い方を教えられている…◆南半球には、さかさまの世界地図が観光客向けに売られている。北半球が上になった地図は15~16世紀ごろから広まったというから、世界はずっと大航海時代の欧州中心の価値観で描かれてきた。地球を「真下」からつくづく眺めてみれば、まるで違った景色が見えてくる◆太平洋のど真ん中にあるオーストラリアは昨年9月から大規模な森林火災が終息せず、コアラをはじめ10億匹以上の野生動物が犠牲になったという。左端の南米アマゾンでも熱帯雨林の火災が相次ぎ、右側のアフリカ大陸は砂漠化が進む。さかさまの地図には、気候変動にあえぐ世界の現実が鮮明に記されている◆きょうは二十四節気の「大寒」。一年で最も冷え込む時季とされるが、今年は北国から届く雪だよりも乏しい。こうして暦を書き記すしか、季節を実感できなくなっている。本末転倒でどうにも心苦しい◆地球はどうなってしまうのかと、祈るような気持ちで犬の顔をじっとのぞき込んでみる。(桑)

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