四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転禁止を求めて、山口県の三つの島の住民が申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁が運転を認めない決定をした。伊方3号機の運転が禁じられるのは、2017年の広島高裁の仮処分決定以来だ。2度までも運転を禁じる司法判断が下ったことを、重く受け止めなければならない。

 四国電は「到底承服できない」として不服申し立てをする方針を表明した。原発に厳しい司法判断に対して経済界では、不満の声が根強い。

 だが、東京電力福島第1原発事故で明らかになったように、いったん原発事故が起きれば被害は過酷だ。あくまで安全が最優先であることは言うまでもない。国や電力会社は、真摯(しんし)に裁判所の決定に向き合うべきだ。

 伊方原発は、四国から九州に向かって延びる佐田岬半島の根元にある。運転を禁じた仮処分決定で広島高裁は、四国電が佐田岬半島の北岸部に活断層はないとして、活断層が敷地に極めて近い場合の評価や十分な調査を行わなかったとの判断を示した。

 また火山リスクについては「阿蘇カルデラが破局的噴火に至らない程度の噴火も考慮するべきだ」とし、四国電の噴火想定は不十分と指摘した。

 規制委の判断も誤りだと断じた。これに対し規制委は、最新の科学的知見に基づいて「適切に審査している」と反論している。

 運転禁止の期間は、山口地裁岩国支部で係争中の差し止め訴訟の判決までだ。伊方3号機は定期検査のため停止中で、4月に営業運転を再開する計画だったが、当面できない状態となった。

 原発に反対する住民が起こした訴訟ではかつて、住民敗訴が当たり前だった。「裁判所はもともと科学的・専門技術的な問題の終局的な判定者たり得る立場にない」(1984年の伊方原発訴訟二審判決)といった逃げの姿勢を最高裁が追認し、司法が原発の安全論争への深入りを避ける構図が確立していた。

 ところが、福島第1原発事故後は様変わりし、電力会社の主張や規制委の判断を踏み込んで審理し、時に厳しい司法判断が出るようになった。裁判官たちが、あまりに巨大な原発事故のリスクを思い知ったからだろう。

 事故から間もなく9年になるが、今も福島県内外で約4万人が避難生活を送っている。事故当時、所長だった故吉田昌郎氏は政府事故調の聴取で、最悪の場合の「われわれのイメージは東日本壊滅」と語っていたことが後に分かっている。

 今回の司法判断を日本のエネルギー政策を改めて考える機会にしたい。昨年は新規の原発再稼働がゼロになった。政府は2030年度の電源構成の原発比率を20~22%に引き上げる方針を維持しているが、規制委の審査や安全対策工事の長期化で、この原発比率の実現は困難になっている。

 福島第1原発事故を受けて全原発がいったん停止した後、規制委の審査を申請した原発27基のうち、実際に再稼働したのは5原発9基にとどまる。今後、テロ対策で義務付けられた施設の完成が期限に間に合わない再稼働済みの原発は停止する見通しで、伊方3号機もその一つだ。住民の意見をくみ上げた司法判断を、エネルギー政策に世論や市民の意見を反映させる契機としたい。(共同通信・上村淳)

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