演習林で生徒の伐採作業を見守る伊万里農林高の松本寛教諭(左)=伊万里市の腰岳

3年生の卒業制作を見ながら同僚の北川茂雄教諭(右)と談笑する松本教諭=伊万里市二里町の伊万里農林高

 昨年12月中旬、伊万里市街地にあるビルの一室で、伊万里農林高教諭の松本寛さん(52)が同僚と一緒にドローンパイロットの養成講座を受けた。来年度から授業にドローンを取り入れるための準備だ。

 昨春開校した伊万里実業高では、農業系の学習内容を時代に合わせて見直した。6次産業化に対応してフードビジネス科を設け、生物科学科は家畜以外にペットの飼育を始めた。森林環境科はドローンのほかに造園の授業も加えた。

 少子化が進む中、生徒を受け入れる間口を広げる狙いもあるが、本年度の森林環境科の入学者は定員40人の半数にとどまった。昨年度も大幅な定員割れで、このままだと80年続いた林業教育の歴史が途絶えかねない。松本さんは「魅力ある授業をしてアピールしたい」と力を込める。

 林業の現場も人の確保に苦労している。2015年の全国の林業従事者数は約4万5千人で、30年前の3分の1。近年は国が担い手育成に力を入れ、若年層は増加傾向にあるものの、全体では減り続けている。労災発生率は全産業の中で最も高く、安全や賃金面の改善など難題が山積している。

 林業の衰退は業界だけの問題ではない。山林の荒廃は水源の涵養(かんよう)や生物の多様性維持などの公益機能を損ない、地域全体に悪影響を及ぼす。今、日本の人工林の約半数が伐採期を迎えているが、人手不足などで伐採後に再造林をされないケースが目立つ。「はげ山」や手入れを放棄された山は災害に弱く、土砂崩れを起こしやすい。

 伊万里農林では毎年8人前後が林業に就職しているが、今年の3年生は3人と少なかった。松本さんは一人でも多く林業に従事してもらいたい思いがある一方で、「林業に直接携わらなくても、山の大切さを理解し、地域で守る意識を広げてくれる人になってほしい」と話す。

 松本さんは昨年5月、脳出血で倒れて4カ月入院した。医師からは「山の仕事はできない」と言われたが、今では生徒と同じように山の斜面を歩き、チェーンソーも使う。「無理はしてませんよ。山に来たら調子良くなって、麻痺(まひ)しているのを忘れるくらい体がよく動く。山が、一番のリハビリです」

 今月21日、演習林では3年生の離山式がある。「第2の教室」に別れを告げる伝統行事で、伐採を行った場所に苗を植えて後輩に引き継ぐ。その木が伐採されるのは60年後。やんちゃな若者たちの歓声が山に響いていることを願っている。=随時掲載=

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