駅のピアノを弾く城島岳さん=小城市三日月町のJR小城駅

【2018年8月14日の記事】

 2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、オランダのホストタウンになっている佐賀県は、現地の文化に親しんでもらおうと、JR新鳥栖駅と小城駅にピアノを設置する。駅に置かれたピアノで通行人が自由に演奏する「オランダ流」の楽しみ方に触れてもらい、音楽による地域の活性化にもつなげる。

 人が行き交う駅にピアノがあるオランダの文化に親しんでもらい、観光拠点としてのにぎわいづくりだけでなく、駅の利用も促そうと県が進める「ピアノの駅」。昨年12月にはJR佐賀駅にもお目見えし、この取り組みで設置されたピアノは3台になった。

 「何人も弾いている。遠方から『ピアノはいつでも弾けますか』と問い合わせの電話もある」。最初にピアノが設置されたJR小城駅の駅員の坂口誠さん(66)は、ほぼ毎日ピアノの演奏を耳にするという。

 年齢層は幼児を連れた親子や帰宅途中の学生など幅広い。世界的ピアニストの近藤由貴さんが小城駅でピアノ演奏をした動画をネットにアップしており、ベートーベンのソナタは5万7千回再生を記録している。

 福岡市のゲーム制作専門学校に通う城島岳さん(19)は12月下旬、寒さでかじかむ手をこすり合わせながらピアノの前に座った。楽譜は読めないが、演奏練習用の動画で習得したゲーム音楽のフレーズを組み合わせ、即興で今の気分に合う一曲を仕立てた。

 11月までは小城市の実家から始発と終電で通学していて、駅に着き帰宅するまでの小休止にピアノを弾いていた。現在は福岡で暮らすが、実家からアパートへ帰るのにも「ピアノがあるから電車を待つ時間が気にならなくなった」と笑う。

 JR新鳥栖駅では、子どもたちの団体がピアノを演奏する光景も見られる。いつでも気軽にピアノが弾けることで、「オランダ流」の文化は駅利用者に浸透しつつある。

 県は「気軽な利用を目指している」として、利用状況の詳細な調査はしていない。さらなる裾野の拡大に向け、利用者に「#ピアノの駅」などのハッシュタグを付け、会員制交流サイト(SNS)で発信してもらうことを期待している。

 担当者は「旅や演奏の記録を自由に書き込めるような、利用者ノートの設置なども考えたい」と話し、ピアノを通して利用者同士が心の交流ができるような仕掛けも視野に入れる。今後は佐賀空港などにもピアノの設置を検討するという。

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