安倍晋三首相は年頭記者会見で観光を「地方創生の起爆剤」と強調して、訪日外国人の増大に向けて海外へのPRに注力する方針を示した。政権が看板政策とする地方創生だが、約30分間のやりとりで触れたのはこのくだりだけだ。

 人口減少や高齢化が痛撃する地方は取り巻く環境が厳しさを増し、さまざまな打開策が模索されている。だが、それらの成果は極めて限定的だ。

 2015年度を初年度とする地方創生は第1期の5年間を終え、4月から第2期に入る。これを転機に持続可能な地方自治の構築を見通せる新たな政策展開を期待したいところだが、手詰まり感も漂う。

 低調の象徴はメインテーマである東京一極集中の是正だ。この間、政府機関や企業の地方移転、東京23区の大学の定員抑制、移住先での起業支援などあの手この手のてこ入れ策を打ち出しながら、逆に人口の転入超過に拍車が掛かっている。

 このため第2期の政策メニューとなる「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、第1期中に東京圏の人の出入りを均衡させるとした目標を第2期終了の24年度まで先送りせざるを得なかった。

 にもかかわらず、総合戦略にある第1期検証の項では、東京圏に分がある雇用や生活環境などの背景分析はあっても、なぜ対策が奏功しないか示されていない。厳しい総括と反省なしには、次の5年で結果を出せるとは思えないのである。

 目玉とした、都市住民が地方と交流する「関係人口」の拡大も効果は不透明だ。週末の副業や祭りの参加・運営など「観光以上、移住未満」のイメージだが、これまで国が旗を振ってきた移住促進政策との整合に戸惑う自治体は多いだろう。

 くしくも第2期総合戦略が決定された日、総務、国土交通両省は、住民の過半数が65歳以上で共同生活が困難な「限界集落」が2万を超えたとする調査結果を公表した。

 人口が減りゆくのはもはやあらがえない。それなら、こうした地域も含め薄く広く全体の保持を図るのか、それとも行政サービスの効率化や高齢化進展後の医療体制などを念頭に地方の中核都市に集約させるのかを、明確に方向付ける時期に来ているのではないか。

 夏には注目の答申が予定される。首相の諮問機関である地方制度調査会は、市町村が行政施策のあらゆる分野を手掛ける「フルセット主義」が難しくなるのを見越し、複数市町村による「圏域」を自治体とみなして住民サービスを担えるようにする法制化を検討中だ。

 ただ、これには市町村の評判が悪い。中核的な都市の主導となりがちで、かつて吸収された形の周辺地域で衰退を招いた「平成の大合併」のトラウマを連想するからだ。

 それでも新しい圏域行政に活路を求めざるを得ないなら、その制度設計には細心の配慮が求められる。「切り捨て」は許されない。上意下達の法定にこだわらず、既存制度の弾力的な運用も選択肢に、地方側の声を反映させたい。

 地方自治のかたちを巡る今年のトピックとしては「大阪都構想」が挙げられる。15年に続く2度目の住民投票が11月にも実施される見通しだ。それ自体は局地的な事象だが、主導する大阪維新の会はその先の道州制も見据えている。全国的な視座で動向を注目したい。(共同通信・佐久間護)

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