中国・成都を旅した作家の水上勉さんが植物園を散策していると、竹林にイスやテーブルが置かれ、学生たちが本を広げていた。竹の空洞は外からの音を吸い込む防音効果があり、思索にふけるのにちょうどいい。〈みんな竹林の賢人たちに見える〉と『閑話一滴』につづっている◆中が空っぽになっている竹が、どうして折れずに高くそびえ立つのか。熊本県立大などの研究チームが力学的に解明した。空洞を仕切る節が根元と先端、中央部で絶妙な間隔に配置され、強度と柔軟性を生んでいるという。節があるから大きく育つ―古くから「節目」が大切にされてきた理由もわかるような気がする◆きょうは成人の日。民法改正で再来年春には成人年齢が18歳に引き下げられ、時代とともに移ろう「節目」だが、大人として社会に踏み出すことの重みに変わりはない。新成人の誓いなど遠い記憶のかなたに去った身には、ミレニアムや2000年問題の狂騒の中で産声を上げた子がもう20歳かと感慨深いものがある◆若さを意味する「弱冠」とは元来、男子が20歳を迎え成人の証しの冠をかぶることだった。漢語で「弱」は「やわらか」「しなやか」ということである。「強さ」ばかりが幅を利かす時代にこそ、「弱」の豊かな意味を胸に刻みたい◆竹のように高く伸びゆく、はたちの節目の君よ。(桑)

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