アスパラ栽培などを手掛ける庄山和孝さん。佐賀農業賞の優秀賞を受賞した=西松浦郡有田町(佐賀県提供)

 思春期に引きこもりを経験し、農業との出合いを通じて社会復帰した西松浦郡有田町の庄山和孝さん(36)が11年間にわたって農業経営や技術の研さんに励み、本年度の佐賀農業賞の若い農業経営者の部で優秀賞を受賞した。「人生を変えた農業に恩返しをしたい」との思いを胸に、山里の営みを守り続けている。

 庄山さんは中学生の頃、人間関係づくりがうまくいかなくて学校生活に苦痛を感じ、3年生の時に不登校気味となった。高校進学後も学校に行けないまま1年の時に中退し、自宅で引きこもる日々が続いた。「ずっと疲れがとれないような感じで、何もやる気が起きずに将来を考えることもできなかった」と振り返る。

 月日を重ねるうちに少しずつ気持ちがほぐれ、20歳になると生活を変えようとの思いが芽生えてきた。「家族も無理に何かをさせようとせず、見守ってくれたのがありがたかった」。ちょうどその頃、親類から頼まれた農作業の手伝いに応じ、小松菜の栽培に関わるようになった。

 太陽を浴びて土に触れるうち、自然と前向きな気持ちになれた。「自分で大切に育てた成果が形になって達成感を得られる。コツコツと仕事するのは自分の性格にも合い、導かれるように農業に進む道が見えた」と庄山さん。実家は非農家だったが、自宅近くに一定規模の農地を所有していた。25歳の時に一念発起して就農し、本格的にアスパラの栽培に乗り出した。

 農業の中で得意の工作を生かし、作業道具の改造や自作を手掛けている。土を掘り起こす鍬(くわ)は腰を曲げずに作業できるよう柄(え)の部分を2本にした。収穫台車には暑さ対策で送風ファンを取り付け、夏場の収穫作業の改善を図った。不要になった扇風機の回転部分をバケツの中に設置し、液体肥料を自動でかき混ぜられるようにしている。

 研修会に積極的に参加して知識と技術の習得に励み、自然環境と調和した農業を目標に有機栽培なども研究する。除草作業を軽減するために草を食べるヤギの放牧も試みる。庄山さんは「農業のIT化が進むけど、アナログでも安全安心な作物づくりや作業の省力化を進めるのが自分らしいと思う。これからもかけがえのない地域の環境を守るための農業に取り組んでいきたい」と話す。

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