相模原殺傷事件の初公判での検察側・弁護側の冒頭陳述要旨は次の通り。

■検察側

 【犯行に至る経緯】

 被告は2012年12月からやまゆり園で働き始め、当初は障害者を「かわいい」と感じていた。その後「意思疎通のできない障害者は不幸を生み出す。いらない」と思うようになった。15年夏、世界情勢に興味を持ち「意思疎通のできない障害者は殺した方がいい。殺す」と考えるようになった。

 16年2月には衆院議長公邸を訪れ、襲撃を予告する手紙を渡した後、園を退職し措置入院となった。同3月、他人に危害を及ぼす恐れがなくなったとして措置入院が解除されたが、障害者殺害を計画した。内容は▽職員が少ない夜間に実行▽職員を拘束し意思疎通のできない障害者を殺害―などだった。

 被告は職員を拘束するには体を鍛える必要があると考え、格闘技ムエタイのジムを利用し始めた。犯行が報道された時、見た目がいい方が自分の考えを信用してもらえると思い美容整形をした。

 16年7月25日、いつものように大麻を使用し、自宅から5本の刃物を持ち出した。翌26日未明、車でやまゆり園に。近くの民家前に車を止めた際、住民とたわいもない話をしたが、会話はかみ合っていた。

 刃物などを入れたバッグを持って園に侵入。職員を脅したり、結束バンドで縛ったりし、意思疎通ができないと確認した障害者を包丁などで突き刺した。別の職員の拘束に失敗して逃走を決意、手当たり次第に障害者を刺した。

 【争点】

 責任能力の有無と程度が争点だ。弁護側は、被告が大麻精神病などの疑いがあり心神喪失や心神耗弱だったと説明する。

 しかし、施設での勤務経験や見聞した社会情勢を踏まえて被告の考えが形成されており、正常心理の範囲内だった。病的な妄想ではなく、単なる特異な考え方だ。大麻の影響で犯行の決意が強まったり、時期が早まったりしたにすぎない。影響は大きくなかった。

 動機が形作られた経緯は理解可能だ。職員が少ない夜間を狙った上、ジム通いや美容整形もしており、犯行は計画的だった。逃走後、警察署に出頭しており、犯行が違法であることを認識していた。被告には完全責任能力があった。

 【重視すべき事情】

 結果は極めて重大だ。強い殺意があり、卑劣で残忍な態様で、計画的な犯行。動機は反人道的、反社会的で酌量の余地はない。遺族や被害者家族の処罰感情は厳しい。被告には反省の態度がなく、更生可能性もない。

 

■弁護側

 【責任能力】

 起訴内容の客観的事実は争わない。被告は事件当時、大麻精神病などにより本来の人格ではなく、別人となった結果、事件が起きた。刑事責任能力はなかった。刑法は心神喪失者の行為は罰しないと定め、心神耗弱の場合は刑を減軽するとしている。精神障害が犯行に影響を与えたか、影響がどの程度だったかを判断しないといけない。

 【被告の生い立ち】

 小学生の時から明るく人懐こい性格だった。知的障害がある生徒も同級生にいたが、差別的な言動はなかった。中学、高校の時に飲酒や喫煙をしたが、真面目なタイプとも言われていた。大学では教師を目指し、学童保育で知的障害のある子どもの面倒も見た。一方、危険ハーブを使用したり、入れ墨をしたりした。

 2012年12月から、友人の紹介で「津久井やまゆり園」のアルバイトを始め、13年4月に常勤職員になった。「入所者がこうしたら喜ぶ」と身ぶりを交えて話すこともあり、明るく優しいやんちゃなお調子者だった。

 【犯行に至る経緯】

 15年ごろに「イルミナティ」と呼ばれるカードが未来の事を反映すると妄信するようになり、同年12月ごろには「自分は選ばれた人間。伝説の指導者である」などと発言するようになった。16年2月15日に衆院議長公邸に手紙を持参し、その後に相模原市が措置入院させた。この時の医師は大麻精神病や妄想性障害と診断していた。

 16年3月2日に退院した後も大麻を使用していた。同年10月に犯行を決行しようと思ったが、(事件2日前の)7月24日深夜、大麻を一緒に使用していた知人に「やくざに命を狙われている」と言われて犯行を早めた。

 その後、「尾行されている」「車に発信器を付けられている」と思うようになり、車をファストフード店に放置した。タクシーに乗った際は身を隠すようにシートで横になっていた。当時、一緒に食事をした知人女性には「意思疎通できない人を殺す」と発言。この女性は友人に「もう手遅れ。関わらない方がいいレベル」とLINEでメッセージを送っている。被告は自宅でも「ださい」「きもい」などの幻聴が聞こえることがあった。

 【大麻の影響】

 13年から16年の犯行直前まで週に4~5回、多い時に1日数回大麻を使用していた。大麻を長期的に常用すると、妄想などの精神疾患が発生する。被告は大麻精神病などによって行為の善悪を判断し、それに従って行動をコントロールする能力がなかった。完全責任能力があるか、慎重な判断をしてほしい。

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