昭和の大横綱双葉山(ふたばやま)が69連勝を記録するまで、約150年間破られることがなかったのが江戸時代に活躍した第4代横綱谷風(たにかぜ)の63連勝。この連勝の後、負け一つを挟んでさらに43連勝した。足かけ十年間でたった1敗。まさに無双である◆ところが、谷風は寛政7(1795)年1月9日、現役のまま、あっけなく急逝する。当時流行していた風邪が原因だった。「わしを土俵で倒すのは無理だから、風邪をひいた時に来い」と豪語していたが、世間は谷風がひいた風邪を「谷風邪」と呼んだ(現代書館『相撲大事典』)◆この前後、欧州で風邪が大流行していた。内務省衛生局の『流行性感冒(かんぼう)』に記述がある。「欧洲(しゅう)に蔓(まん)延し人類のみならず馬及(およ)び犬をも襲へり。脳膜炎、肋(ろく)膜炎の併発は特に多かりき」(1775年)、「英国にては其(そ)の人口五分の四を襲へり」(1782年)◆有名なのは1918年の悪名高い「スペイン風邪」。日本でも猛威を振るった。死者は38万人を超え、患者数も当時の国内人口の半数近い2300万人を数えた。インフルエンザウイルスの存在すら分かっていなかった時代である◆先月、佐賀市であった大相撲の冬巡業。力士がインフルエンザに感染しながら土俵に上がり、感染への認識がいかにも甘いと問題になった。これからまさに流行期。くれぐれも警戒を。(丸)

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