新しい年が明けた。深刻な浸水被害に加え、鉄工所からの油流出もあった昨年8月の記録的大雨から4カ月余り。被災自治体は災害対応を検証し、他の自治体も災害への備えを強化する年にしたい。

 昨年8月の豪雨を改めて振り返る。8月28日未明、佐賀県など九州北部は、県中西部を中心に1時間に100ミリ超、3時間で200ミリを超える激しい雨に見舞われた。武雄市では激流に車が流されたり、家が浸水したりして3人が命を失い、県内で6千棟を超える住宅が浸水や土砂崩れの被害に遭った。被害が大きかった武雄市や油流出が加わった杵島郡大町町では復旧が長期化し、今も日常を取り戻せない人たちがいる。

 武雄市や大町町では職員へのアンケートなどをもとに、災害対応の検証作業が本格化する。被災自治体には、自らの対応を振り返るだけでなく、他自治体の参考になる形での検証作業を求めたい。

 災害対応は年末の議会でも議論された。武雄市議会の一般質問で課題を問われた小松政市長は「夜間で冠水の全容がなかなかつかめず、防災行政無線が聞こえないという話もあった。高齢被災者への支援、避難所でのプライバシー確保などの課題もあった」とした。

 実際、武雄市が避難勧告を指示に切り替えたのは8月28日の午前5時45分。しかし、市内では午前4時前から浸水が始まり、午前4時12分から消防署への救助要請が相次いでいた。ほとんどの人が就寝し、激しい雨で屋外の放送が聞こえない中で、どのように情報を集め、どんな形で伝えるべきだったか。難しい課題を突きつけている。今回の浸水世帯への防災行政無線受信機配備を求められた小松市長は「受信機配備や範囲などを含めて早急に対応を詰めたい」と答弁した。被災自治体でなくても、情報伝達の手段や内容を再確認したい。

 また、武雄市では線状降水帯による豪雨で、災害対応拠点となる市庁舎をはじめ市内各所で浸水や冠水が発生、非常招集に対応できない職員も多かった。消防署も同様だ。庁舎近くに住む職員での緊急対応体制や、地震を含めて出勤できない職員が多く発生した場合、各所に対応拠点を設けることなども考えておくべきだろう。

 避難所の態勢は十分だろうか。障害者、高齢者、外国人、ペットと一緒の人、アレルギーのある人など、多様な対応はできるか。女性の着替えや授乳などへの配慮は十分か。備蓄品の量や品目に不足はないか。配食や炊き出しには、民間の自発的な活動が大きな力になった。全国から駆けつけてくれるボランティアや、被災者ニーズを把握して采配するボランティアセンターの運営を含め、民間の力を効率的に生かす手法も考えておきたい。ハザードマップを活用して住民に危険地域を周知する取り組みは、全自治体で行いたい。

 佐賀豪雨の後、東日本では台風による大きな被害が続いた。近年、想定を超える台風や豪雨が常態化している。もはや「想定外」という言葉は使えず、災害に備え、住民の命を守る自治体の責務は増大している。被災事例の教訓を自らの地域に置き換え、災害対応を充実させることが急務だ。新年度の予算編成も本格化している。いま一度、災害対応にも目を配りたい。(小野靖久)

このエントリーをはてなブックマークに追加