再生に向け、ボランティアらが清掃した松川屋=佐賀市松原

屋内を掃除する参加者たち=佐賀市松原の松川屋

しっくいを塗り直すため、表面のペンキを削り取っていくボランティアたち=佐賀市松原の松川屋

 現在は空き家になっている佐賀市松原の老舗旅館「松川屋」を有志の手で再生させるプロジェクトが、本格化している。歴史や映画にまつわるエピソードがある建物を観光資源として生かし、周辺のにぎわい創出の拠点を目指す。ボランティアを交えた建物の清掃活動などを実施し、2021年度までに交流スペースやゲストハウスの環境を整える。

 1853年に創業した松川屋は、松原神社の門前町として栄えた新馬場通りにある。1899(明治32)年に文豪森鴎外が宿泊し、その際に見た佐賀の暮らしを「小倉日記」に記している。1957(昭和32)年には松本清張原作の映画「張込み」のロケで訪れた出演者やスタッフが滞在した。建物は改装を経て昭和初期の趣を残しており、現在は食堂部分だけが和風カフェとして利用されている。

 所有者は4代目おかみの故西村シヅ子さんの長男で、映画評論家の西村雄一郎さん(68)。造りに引かれた「えびすFM」代表の池田眞由美さん(59)ら10人で2年前に実行委員会を立ち上げ、活用策を検討してきた。本年度、住民の活動を後押しする県の「自発の地域創生プロジェクト」に採択された。月1回の清掃をはじめ、建物の見学ツアーや演劇など定期的にイベントを実施する。

 第1回目の清掃活動が昨年12月22日にあり、実行委やボランティアら約30人が参加した。しっくいの壁に上塗りされた古いペンキを削り取り、旧式のエアコンを取り外した。参加した西九州大看護学部1年の石橋歩さん(19)は「『となりのトトロ』みたい」とタイル張りの風呂に感動し、「昔のきちんとした造りを残しつつ、現代に合ったものになれば」と話した。

 「張込み」の人気は根強く、今も各地で上映会が開かれているという。西村さんは「ロケ隊の宿泊をきっかけに私が映画評論家になったことも含め、つくろうとしてもつくれないストーリーがここにはある。建物とともに佐賀の文化の一つのシンボルになれば」と期待を込める。池田さんは「若い人も巻き込み、かつてのにぎわいを取り戻したい」と話す。

 次回の清掃活動は今月13日午前10時から。参加など問い合わせは池田さん、電話080(5288)6347。

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