正月七日を「人日」という。古代中国では元日から1日ずつ順に雞(とり)、狗(いぬ)、羊、猪(ぶた)、牛、馬と家畜の1年の吉凶を天気で占った。その日が晴れならよい運勢、天気が悪ければあまり恵まれない、というふうに◆そして7日は人を占う日。この日は罪人の処刑を休み、一族が連れだって7種の菜を摘み、温かい汁物にして食べた。〈七草がゆの起源をたどっていくと、遠い昔の平和への祈りに行き着く〉とは俳人長谷川櫂さんの感懐である◆そんな願いもむなしく、このところ人の世は荒れ模様が続く。裁判を受ける前から罪人扱いをされたと、日本の刑事司法手続きを批判してきたカルロス・ゴーン被告は海外へ逃げた。中東では米軍による空爆でイランの大物司令官が殺害され、両国は一触即発の危機に。衆院議員5人に中国企業が現金を渡したと供述したIR汚職も色あせるほど、気がかりなニュースばかり◆お正月の風景から、たこ揚げや羽根突きが消え、人は大空を仰ぐことがなくなった。こま回しも消えて、大地を見下ろすこともなくなった。春の七草を探して摘み草に出ることもなくなった時代に、自分がいまどこに立っているか、実感するのは難しい◆道端のナズナは、寒さに耐えて生長した葉ほど深く切れ込んで味わい深いという。荒天もまた人の世の試練かと、足元を見つめてみる。(桑)

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