東京五輪・パラリンピックの年が明けた。スポーツは今、世界的な活況の中にある。日本も五輪実施競技は裾野を広げ、競技力を高めている。多くの国際大会での好成績がその証しだ。

 選手を支援する態勢は多様になった。史上最大の規模となる日本選手団は開催国の利点を生かし、入念な準備ができる。幅広く活躍するだろう。

 チケット販売は記録的な成功を収める見通しだ。どの競技会場も満員の観衆で埋まるだろう。昨年のワールドカップ(W杯)ラグビーを上回る、空前の熱気に包まれるのではないか。

 その舞台を整える大会組織委員会は十分な収入を確保した。国と東京都による恒久的な施設の整備費などを除く、組織委自体の大会運営予算は6300億円。うち国内マーケティング収入は3480億円となった。いずれも五輪史上最大の額だ。

 前回のリオデジャネイロ(ブラジル)大会をはじめ、過去には準備の最終段階で資金不足に直面し、計画の縮小や断念に追い込まれた大会がいくつかあった。その点、多くの国内企業の協賛は組織委にとってかけがえのない財産となっている。

 施設の整備は順調に進み、健全な予算との二つの重要基盤は整った。

 しかし、もちろん油断は禁物だ。339種目に約1万1千人の選手が参加する今回の五輪の運営はとにかく複雑だ。

 中でも選手をはじめとする大会関係者と五輪観戦客の交通・輸送、さらに猛暑と台風の対策に万全を期す必要がある。

 競技会場を抱える1都3県の東京圏の人口は3600万を超える。これほど多くの住民が生活し、活発な経済活動を営む地域で五輪が開催されたことはかつてない。

 流通をはじめとする経済活動に五輪がマイナスの影響を与えるわけにはいかない。かといって、巨大な経済圏のただ中に、何ら有効な方策を施すことなく五輪を放り込むことも許されない。

 選手村と競技会場を結ぶ一般道および首都高速道路は、柔軟かつ効果的な交通規制を行わなければならない。また、観戦客と通勤者が利用する電車と地下鉄も混雑の低減と、安定した運行に知恵を絞る必要がある。

 国際オリンピック委員会(IOC)は昨年、マラソンと競歩の会場の札幌市移転を突然決めた。レースが想定を超える暑さに見舞われれば、不測の事態を招きかねないとの理由だった。

 IOCは放送権料とスポンサー収入の拡大の中で、五輪のブランドを傷つけてはならないと、大企業同様に危機管理意識をここ数年強めている。熱中症によって多くの選手が倒れるシーンが映像となって、世界を駆け巡るのは絶対に避けたいと考えたようだ。

 五輪が世界の人々、特に開催都市の市民にとって祝祭であるとする伝統的な考え方はIOC内で一歩後退し、代わりに大きなビジネス発展の好機と捉える考え方がいよいよ前面に出てきた。

 最終準備段階で組織委と東京都がIOCとの協調を強めなければならないのは当然だ。しかし、IOCの指摘が合理性を欠いたものなら、主張すべきところは主張し、五輪の伝統的な価値を大切にする大会を築き上げてほしい。

 選手にも観戦客にも地域住民にも優しい、きめ細かな配慮にあふれた大会でありたい。(共同通信・竹内浩)

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