絵馬に恋愛成就の願いを込め、奉納するタイ人観光客の女性=鹿島市の祐徳稲荷神社

■祐徳神社ロケが起爆剤に

 佐賀を訪れるタイ人観光客が劇的に増えている。鹿島市の祐徳稲荷神社がタイ映画やドラマのロケ地に使われ、昨年からタイで公開されたことで人気に火が付いた。県内宿泊者は前年比4倍に急増、今年上半期も昨年実績に迫る勢いで伸び続けている。観光客の利便性向上や消費拡大につなげようと、地元では受け入れ態勢を充実させ始めた。

 タイ語の願いがつづられた絵馬が、絵馬所の一面に並ぶ祐徳稲荷神社。九州旅行ルートの一つで訪れたタイ人女性(26)も恋愛成就の絵馬を奉納した。「ドラマのロケ地を一目見たくて来た。阿蘇や湯布院も回ったけど、のどかな佐賀の風景が九州で一番きれい」

 祐徳稲荷神社によると、今年の5月ごろがピークで1日最大300人ほどが訪れ、夏場に落ち着いたものの、現在も1日数人~十数人が訪れているという。

 観光庁の統計では、タイ人観光客の県内宿泊者は2013年に370人で、14年は前年比316%増の1540人に急伸した。人数自体は他県と比べて少ないが、伸び率は九州一、全国では島根県に次いで2番目になる。15年も6月までの半年で前年に迫る1480人と増え続けている。

 観光客が増えた最大の要因は、佐賀をロケ地にしたタイ映画とドラマの影響だ。青春映画「タイムライン」(14年)、日本の民話がモチーフのドラマ「きもの秘伝」(15年)、県内ロケ地が全体の95%に及ぶドラマ「STAY」(15年)の3本があり、県フィルムコミッションが2年前からロケ誘致に取り組んだ。祐徳稲荷神社は全作品でロケ地に使われ、切れ目のない公開が息の長い神社人気につながっている。

 国の政策も後押ししている。タイ人の日本への入国手続きは13年7月から緩和され、IC旅券があればビザなしでも15日間まで滞在できるようになった。13年7月~14年6月末のタイから日本への旅行者数を見ると、前年同期の約33万人から約58万人に増えている。

 こうした現象を好機と捉え、地元の鹿島市でも動きが出ている。市はタイ人の受け入れ態勢充実に約600万円を予算化した。タイ人の多くがJR肥前鹿島駅からバスで神社に向かうため、本年度中に駅前に観光案内所を移転し、タブレット端末で通訳とつながるサービスを設ける。

 神社近くの祐徳門前商店街は有田工高の生徒と協力して外国人向けの動画を制作している。参拝の作法や名物ようかんの食べ方を分かりやすく紹介する。神社は今ある韓国語や中国語のおみくじに加え、タイ語版を開発中だ。

 祐徳稲荷神社の鍋島朝寿権宮司(48)は「タイ人観光客の増加は、地元の人の意識が変わるチャンスでもある。商店街と一体となり、日本の四季や文化の魅力を広めていきたい」と話す。

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