お寺の門前には、ありがたい教えが書かれている。〈隣のレジは、早い。〉もその一つ◆スーパーで一番空いているレジに並んだのに、後から隣の行列に来た人がもう買い物を済ませている。何だか損をしたようでイライラ…。人生はままならないものである。他人と比べることで苦しみが生まれる、というのがこの言葉の深い味わい◆先日発表された「輝け!お寺の掲示板大賞」の入賞作である。公益財団法人仏教伝道協会が昨年から始めた企画で、今回は全国からスマホで撮影された925作品が寄せられた。それぞれの言葉に、住職の個性と現代社会への問いかけがのぞく◆〈お釈迦(しゃか)様を嫌いな人もいた 「誰にも嫌われたくない」なんて思わなくていい〉。周囲の「評価」に振り回されて生きづらさを覚える。ここにもそんな、他者を気にしすぎる心のありようがほの見える。〈ほんとうのいちばん深い闇は わかっているという思いです〉。わからない人生をわかった顔で歩く危うさも胸にとどめたい◆人口減少や信心の移ろいとともに、お寺の存在意義が問われている。掲示板が結ぶ新たな縁があるかもしれない。散歩がてら早速まねして探してみた。〈私の心は裁判官 他人は有罪 私は無罪〉。身近なところにも深い言葉がある。棚の上の一番高いところへ登る癖までお見通しである。(桑)

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