今年は佐賀市の佐賀県立美術館で、現在のアートシーンを展望できる大規模な展覧会が続いた。改元直後の5月には、個性的な作風が持ち味の二紀展巡回展が6年ぶりに開かれ、秋には徹底的なリアリズムを追求するスペインと日本の写実絵画を集めた「超写実展」が観客を魅了した。

 そして、令和元年の締めくくりが、現在開催中の「東光展」巡回佐賀展(東光会佐賀支部・緑光会主催、佐賀新聞社共催)である。

 もちろん、それぞれ独立した絵画展だが、5年ごとに開いていた二紀展が1年ずれ込み、偶然、東光展と重なったという事情がある。結果的に、画風が大きく異なる二つの公募展を同じ年に楽しめるという、佐賀の美術ファンにはうれしい状況が生まれた。

 開催中の東光展は「具象の美」を掲げており、穏健な分かりやすさが特徴だろう。東京都美術館で今年4月から5月にかけて開かれた本展から選ばれた作品と、県内作家26人の作品、合わせて90点を展示している。

 目指す「具象の美」とは、単に対象をありのままに写し取る説明的な絵ではなく、新しい美意識に基づき、対象の本質にまで迫ろうという試みである。

 三つの展覧会から、何が見えてくるのか。

 その問いかけに、東光会佐賀支部緑光会代表の画家田代利夫さんは「ものを見て描く、という同じ行為でも、アプローチや表現の仕方はさまざま。だが、人生を豊かにするという役割は共通する」と指摘する。

 具象か、抽象か、写実かという手法の違いはあれども、目指す先には、私たち鑑賞者の人生を豊かにする目的があるというわけだ。

 もう一つ、巡回展では中央の厳しい選考を経てきた、今の時代を代表する作品が集められてくる。

 例えば、東光展の場合、最高賞・文部科学大臣賞を得た本田年男さんの「リバイバル」や、一般の部でトップの東光賞に選ばれた金谷顕人さんの「跡」が、それに当たる。大胆に絵の具をぶつけたようにして映写機を描いた「リバイバル」と、色つきのフィルターをかけたような空気感をまとった「跡」は対照的ではあるが、いずれも美術の新たな時代を予感させる。

 さらに、佐賀に根ざした作家たちが、高い評価を受けているのがよく分かる。来佐した東光会の難波滋副理事長が「佐賀の画家たちは若々しく活気がある」と評価していた。実際、今年の日展で審査員を務めた事務局長の岡本猛さんや、昨年の会員賞の市丸未来さん、それに続く今年の会員賞に選ばれた高嶋章一郎さんら、これからを担う旬の画家たちの作品が並ぶ。

 三つの大規模な展覧会に加えて、もう一つ今年は特別なイベントがあった。高校生の文化の祭典「第43回全国高校総合文化祭(2019さが総文)」である。美術・工芸部門の会場は多くの来館者でにぎわったが、全国から集まった高校生たちの発想力の豊かさと、わき出す情熱に満ちていた。

 美術館で過ごす時間は私たちの人生を、心を豊かにしてくれる。特別な1年を締めくくる東光展の「新しい具象」は、どこへ向かおうとしているのか、この機会に見届けておきたい。(古賀史生)

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